〜対象別サンプル付き・訓練メール本文のつくり方ガイド〜

標的型攻撃メール訓練を初めて担当することになったけれど、「訓練メールの本文ってどうやって考えたらいいんだろう…」と悩んでいませんか?

訓練メールの本文をどのようなものにしたらよいか?というのは、訓練を実施する担当者が抱えるお悩みのベスト3に入るといっていいほど、全ての担当者が直面する課題です。

実際、訓練メールの本文は訓練の成否を大きく左右します。内容がリアルであればあるほど、社員にとって気づきのある訓練になりますし、不自然な内容であれば、「いかにも訓練っぽい」と見抜かれてしまうこともあります。

また、訓練を実施できる機会はそう多くないにもかかわらず、攻撃の手口は無数と言っていいほどあるので、何をテーマとすれば、限られた訓練の実施機会を最大限活かせるのか?というのも悩みどころです。

今回は、初めて訓練を設計する担当者の方に向けて、「メール本文をどう考えるか」という視点とともに、職種や立場に応じた対象別サンプル文面もご紹介します。


✅ 訓練メールの本文を考えるときの基本ポイント

まずは、訓練メールを作成する際に意識したい3つのポイントを確認しておきましょう。

① “業務でありそうな”自然な内容にする

→ 社内でよく使われるメールの雰囲気を意識しましょう。
「経費精算」「パスワード更新」「会議資料の確認」など、日常の連絡に紛れる形がベストです。

② 受け取る人の立場や役割を意識する

→ 新入社員と管理職では、普段届くメールの内容も違います。それぞれに合わせて設計しましょう。

③ 攻撃者の視点を意識する

→ 訓練実施時点で流行している手口など、攻撃者だったらどのような手法を用いてメールを送ってくるかを考えることは、実際に被害に遭わないための予防に繋がると共に、内容のリアルさを高めることにも繋がります。

④ 受け取る人のスキルレベルを意識する

→ 知識のある人に易しすぎる内容の訓練メールを送るのは機会の無駄となってしまいがちですし、逆に全く知識が無い人に高度な内容の訓練メールを送ると”自分には難しすぎる”と感じて敬遠されてしまうかもしれません。各人のスキルレベルに応じた学びを得てもらえる内容を意識しましょう。

⑤ メールの目的は「引っかける」ことではなく「気づかせる」こと

→ あえて不自然な表現を使って「気づいてもらう」のも有効ですが、不安を煽るような内容は避けましょう。

⑥ その訓練を通じて学んでもらいたい事柄を意識する

→ 訓練を実施した結果、社員に何を学んでもらえたらその訓練は成功と考えるのか、また、組織としてどのような気づきが得られたら成功と考えるのか?は、訓練の成果をどのように考えるか?という点で重要です。ゴールから逆算して設計を行うことも考えましょう。


📬 対象別:訓練メール本文のサンプル

以下に、社員の役職や立場別に使えるメール文面サンプルを紹介します。どれも訓練用に設計されたダミーメールの例です。


🎯 一般社員向けサンプル

件名:経費精算システムからの申請差戻しのお知らせ

〇〇様

いつもお世話になっております。
経費精算システムにて、先日提出された申請が差戻しとなりました。

内容をご確認の上、再提出をお願いいたします。

▼差戻し内容の確認はこちら
https://keihi-check.com/view?id=84927

ご不明点があれば管理部門までご連絡ください。

総務部 経費精算システム担当

🔍 ポイント解説:

  • 一般社員にとって身近な業務(経費申請)を題材に
  • 差戻しやミスの指摘など「急いで対応しなければ」と思わせる心理を利用
  • URLのドメインが本物に似ているようで違う(偽装URLに気づいてほしい)

🎯 管理職向けサンプル

件名:【共有依頼】取引先向けの新提案資料について

〇〇部長

営業部の××と申します。
至急、〇〇商事様向けの新提案資料をご確認いただきたく、共有させていただきます。

今週中にお客様への提出が必要なため、内容についてご確認・ご意見いただけますと幸いです。

▼提案資料(ドラフト版)
https://share-file-check.com/files/proposal-202404

何卒よろしくお願いいたします。

営業部 ××

🔍 ポイント解説:

  • 部長職を意識して「確認・判断を要するメール」に
  • 「急ぎで見なければならない雰囲気」で注意力を試す
  • ファイル共有サービスのURLを装ったフィッシングパターン

🎯 新入社員向けサンプル

件名:パスワード有効期限のお知らせ【ITサポート】

perlコピーする編集する〇〇様

情報システム部門です。
〇〇様の社内アカウントのログインパスワードが、まもなく有効期限を迎えます。

つきましては、以下のページより新しいパスワードをご設定ください。

▼パスワード変更ページ  
https://it-secure-center.jp/reset/pass?token=az8362

※このメールは自動送信されています。

情報システム部門

🔍 ポイント解説:

  • 新入社員が慣れていない「パスワード変更通知」を題材に
  • IT部門からの連絡を装うことで「本物っぽさ」を演出
  • 長いURLやトークン付きリンクで「ありがち」な表現を再現

💡 本文を作成したら「社内の誰か」に見せてみよう

訓練メールの本文ができたら、配信前に社内の別の部署の方や先輩に見せて確認してもらうのがおすすめです。自分では気づけなかった「不自然な表現」や「業務とズレた内容」に気づけることがあります。


📌内容によっては関係しそうな部署に照会をかけよう

訓練メールの内容によっては、他部署の業務に影響が出てしまうこともあります。

例えば、総務部が全社員を対象としたアンケートを実施しようとしていたタイミングで、総務部からのアンケートを騙った訓練メールを送信した場合、総務部が実施する本物のアンケートに大きな影響を及ぼしてしまうかもしれません。

このような混乱は避けなければならないので、訓練メールの内容を考える際は、他部署と連携しながら進めることも忘れないようにしてください。


✍ まとめ:メール1通が、セキュリティ意識を大きく変える

訓練メールの本文は、たった1通でも、社員の“気づき”を引き出すきっかけになります。
大切なのは、「社員が普段どんなメールを見ているか」を想像し、その文脈に近づけること。

初めての訓練であれば、難しく考えすぎず、日常の業務に紛れるような自然な内容から始めてみることを意識すると成功しやすくなります。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。