中小企業こそ求められる“セキュリティ教育”への投資の必要性

📌「うちは小さいから大丈夫」…は、もう通用しない

企業の大小にかかわらず、サイバー攻撃の脅威は年々増しています。

自社は取引先も限られているし、そんなに目立つ会社ではない
情報資産もそれほど多くないから、狙われる可能性は低い

こうした油断こそが、犯罪者にとって格好のターゲットとして目を付けられ、企業を危険にさらしているのです。


✅ 実例:斎藤コロタイプ印刷が受けたランサムウェア被害

2025年4月、宮城県仙台市の斎藤コロタイプ印刷株式会社が、
ランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、約17万3000件の個人情報が漏えいした可能性があると発表しました。

  • 従業員数:約100人
  • 地域密着の印刷業を営む中小企業
  • 被害により、顧客情報・取引先情報が外部に流出
  • 一部システムが現在も復旧途中という報道も

❗ 大企業ではなく、従業員100人規模の“ごく普通の企業”がこれほどの被害を受けたという事実は、すべての経営者にとって他人事ではない**警告**です。

斎藤コロタイプ印刷株式会社さんには申し訳ないのですが、こうした事故が報道発表されてしまうことにより”デジタルタトゥー”としてネット上に残り続けてしまうことは、企業活動を続けていく上でマイナスとなることもありえます。

もちろん、自社にとっても他人事ではないとして周りが支援してくれることもあるでしょうが、中小企業においては、一度事故が起きてしまったら大きな傷となってしまうことは避けられないでしょう。


✅ 攻撃の“入り口”はどこにでもある

ランサムウェアの多くは、社員が開いた、たった1通のメールから侵入します。

  • 社員が「重要なお知らせ」と書かれたメールのリンクをクリックしてしまった
  • 添付ファイルを何気なく開いてしまった
  • セキュリティ意識が低く、危険を認識できなかった

いずれも、技術的な脆弱性ではなく「人の判断ミス」がきっかけです。

🔐 だからこそ、「社員の判断力=会社の守り」と言っても過言ではありません。


✅ 中小企業こそ、“教育”が最大のリスクヘッジになる

大企業であれば、万が一の被害時にも、
専門部署や顧問弁護士、広報部が対応にあたることができます。

しかし中小企業では…

  • 一度の事故で顧客や取引先からの信用を失う
  • 損害賠償や対応コストで資金繰りが逼迫する
  • 場合によっては事業継続が困難になることも

セキュリティに詳しい人材がいるわけでもない中小企業において、ランサムウェアなどによる被害に遭ってしまった場合、「とにかく大変なことが起こっている」ということはわかっても、何をどう対処したらよいのか誰もわからない。というのが実際かと思います。

そこで、急いで専門家を頼るわけですが、すぐに対処ができるだけの実力を持った専門家が急いで対応にあたるとなれば、相応の費用が必要になります。

💰【緊急対応費用の相場(日本国内の場合)】

対応内容想定費用(税抜)
🔧 初期トリアージ(被害範囲の確認・初期診断)10万~30万円程度
🛠 フォレンジック調査(侵入経路・原因分析)50万~200万円
🚧 システム復旧・再構築支援(サーバー・ネットワーク再設定等)50万~300万円
📦 バックアップからのリストア支援10万~50万円程度
📞 緊急対応サポート(24時間対応・現地派遣など)1日あたり20万~50万円前後(緊急度・出張対応の有無により変動)
🧾 報告書作成・警察/IPA報告支援5万~30万円程度

つまり、もし被害に遭ってしまったら、数百万円もの急な出費が半ば強制的に求められることになるのです。

大企業であれば問題ない費用でも、余裕の無い中小企業においてこのような急な出費を求められたら、事業を継続すること自体ができなくなってしまうというということもあるでしょう。

📌 つまり、「やられるかどうか」ではなく、「やられたときに持ちこたえられるか」が問われる時代に入ったのです。

そしてその“持ちこたえる力”を強くするのが、社員一人ひとりへのセキュリティ教育です。


◆ セキュリティ教育は「コスト」ではなく「経営防衛」

「セキュリティ訓練」と聞くと、構えてしまうかもしれません。

しかし現在では、

  • 数千円程度で始められるクラウド型の訓練キット
  • 導入から運用までサポートが付いたサービス
  • 実際の攻撃を模した、リアルな疑似メール訓練

など、専門知識がなくても導入できる仕組みが整っています。
**教育の有無は、将来の損失を減らす「経営判断」**だと捉えることが重要です。

🛡️ 補足:事前対策の方がコストは圧倒的に安い

項目目安コスト
標的型攻撃メール訓練月額数千円~、もしくは1回 数万円~
セキュリティ教育動画導入年間数万円〜(無償公開されているものを活用すれば0円)
クラウドバックアップ導入月額数千円〜数万円
EDR(侵入検知防御)導入年間数十万円〜

🎯 被害後の“後悔の出費”より、事前の“予防の投資”がはるかに安価であることは、過去の事例でも明らかです。


◆ 社員の「うっかり」を責めるのではなく、未然に備える仕組みを

標的型攻撃メールは、誰もが引っかかる可能性があります。

  • ベテラン社員でも騙されるほど、本物そっくりの文面
  • 業務に関連した内容で、ついクリックしてしまう巧妙な手口

だからこそ、**日常的に訓練しておくことが「平時の備え」**になるのです。


◆ 経営者に求められる視点:「うちは大丈夫」ではなく「今、何ができるか」

斎藤コロタイプ印刷の事件は、
セキュリティ教育が不十分な中小企業にとって、決して他人事ではありません

  • 顧客や従業員を守るため
  • 自社の信用・事業を守るため
  • 社会的責任を果たすため

✅ 今こそ、経営者として「セキュリティ教育」という一手を打つべき時です。

被害に遭ってしまってから、対応にこんなに費用がかかるなんて知らなかった….と後悔しても遅いのです。

あなたが経営者でなく、社員であるなら、これまで述べたような情報を経営者に対してインプットすることが必要です。被害に遭ってしまった場合、経営者がこうしたことを知らなかったばかりに会社が倒産してしまえば、人生の岐路に立たされてしまうのは誰でもなく、あなた自身なのです。

とはいえ、ITに詳しくない社員の方が多い中小企業において、無理してセキュリティ対策に関する詳しい知識を身につけようとする必要はありません。何よりも大事なことは、経営者も含めて、社員全員が”情報セキュリティ対策は自社にとって重要なことなのだ”と認識すること。

この認識を持っているか否かで、社員一人一人の心構えに大きな差が生まれ、いざという時には会社の命運を左右することにも繋がるのです。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。