“詐欺メールに気をつければいい”では済まされない時代へ

「Zoomで話している相手、本当に本人なの?」
そんな疑念が現実になってきています。

いま、AIで作成したフェイク動画を用いて本人になりすまし、アカウントを乗っ取る詐欺被害が報告されています。しかも、それがオンライン会議の場で行われるというのだから驚きです。

そしてこの手口は、メールやSNSだけではなく、複数のツールを組み合わせて人間の信頼を攻略する“複合型攻撃”の一端にすぎません。

💡 これからのサイバー攻撃は、技術と心理の両面から仕掛けられると心得ておく必要があります。


🎭 実例:AIフェイク動画で「なりすまし会議」

最近報告された攻撃では、以下のような流れが取られていました。

  1. 本物そっくりの動画や音声をAIで生成
  2. オンライン会議に「本人として」参加
  3. 「こちらの資料を確認してください」とマルウェア付きのファイルを送付
  4. 何の疑いもなくダウンロード → 感染

📌 一見、自然な会話。違和感のない映像。だが、それはAIの創作物。

従来のメールや電話では感じるかもしれない“怪しさ”が、リアルな映像と音声によって覆い隠されてしまうのです。

今や、営業のウェビナーでは自分そっくりのAIアバターを作成して、自動で商品説明をするなんていうこともあたり前となってきました。実際、そのようなことを支援するサービスもありますので、会社によっては既に使っているというところもあるでしょう。

こういった技術を悪用し、ターゲットを騙してターゲット自身にマルウェアをインストールさせようとする手口(人の手によってセキュリティ対策を無効化しようとする手口)は、これからますます増えてくるであろうことは容易に想像されます。


🧩 攻撃手口は「組み合わせ」で巧妙に

いまや、攻撃者は以下のような複数の手段を掛け合わせてきます

  • メールで誘導し、
  • SNSでつながり、
  • 会議で信頼させ、
  • クラウド共有で感染させる。

しかもこれらを一貫したストーリーで自然に構成してくるのが特徴です。

🎯 バラバラに見えるツールを“連携させて”人を騙す。それが今の攻撃手法です。


🧠 騙されないために、私たちが鍛えるべき“視点”

では、このような複雑化する攻撃にどう立ち向かえば良いのでしょうか?
その答えは、“感度”を上げること。そしてその感度を上げるには、視点を増やすしかありません。

✅ 視点①:「信頼」に依存しない確認習慣

「この人の顔を見て話してるから安心」はもはや通用しません。
✔ メールや会話の**“目的”**は何か?
✔ なぜこの**“タイミング”で?
✔ 相手は何を
“求めているか”**

これらを冷静にチェックする習慣が必要です。

✅ 視点②:過去の詐欺手口を知ることが未来の予防策

詐欺に騙された人の多くは、
「こんな手口、聞いたことなかった…」
と口をそろえます。

📚 知っている人は、違和感に気づける。知らない人は、騙される。

だからこそ、“どんな手口があるのかを知る”ことが最大の防御になるのです。

✅ 視点③:組織全体で“気づき”を共有しよう

「恥ずかしいから言わない」は大きなリスク。
「これ、ちょっと怪しいかも…」という違和感を共有する文化があれば、防げる攻撃はたくさんあります。

🔄「気づきの連鎖」が、組織の防御力を高めます。


🛡️ 訓練と学びが“感度”を鍛える

「不審なメールを見抜く訓練だけじゃもう足りない」
そんな時代に突入しました。

  • オンライン会議
  • クラウド共有
  • SNS誘導
    など、多様化した手口に対応した訓練シナリオが求められています。

本人になりすましてZoomなどのオンライン会議に誘導するようなメールでは、不審なURLやメールアドレスが使われることもないので、システムでブロックするのは困難です。

そして、本人になりすましたフェィク動画を見てもおかしいと気づけず、本人が話しているから本物だと思い込んでしまっていたら、自分が騙されていることに気づくのは困難です。

📌 単にクリックを防ぐのではなく、「どこに騙しのポイントがあったのか?」を観察する目を養うことが大切です。


🔚 まとめ:セキュリティのカギは「視点を増やすこと」

攻撃手法が進化するなら、守る側もアップデートが必要です。
「自分は大丈夫」と思っているときこそ、騙されやすいのです。

だからこそ、様々な騙しの手口があることを知り、攻撃者がどのような手口を使って私たちを騙そうと仕掛けてくるのか、攻撃者の思考と同じ思考を私たちも持つことが、これからますます重要となってきます。

標的型攻撃メール訓練だけで全ての手口を知ってもらうことは難しいですが、様々な周知の機会やセキュリティ教育の機会など、色々な場で、進化する騙しの手口を共有する機会を作り、「気づきの連鎖」を育む努力が、これからのセキュリティ教育担当者には求められるのだと思います。

🔁 何度も学び、何度も考え、違和感に気づく“視点”を増やしましょう。
セキュリティは、知識と経験の積み重ねで強くなるのです。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。