社会人1年目というこのタイミングを逃さずに塞いでおきたい”人の脆弱性”

🌸春になると、フレッシュな新入社員が職場に加わり、職場の雰囲気も華やかになりますね。
ですが――
サイバー攻撃を仕掛ける側も、そんな「新しい風」を見逃してはいません。

実は、新入社員は**標的型攻撃メールの“狙われやすいターゲット”**の一つなのです。


🎯 なぜ新入社員が狙われるの?

新入社員が配属された直後は、業務に慣れるのに必死な時期。
いろんな部署からメールが来るので、「この人誰だっけ?」と思いながらメールを開くことも多いですよね。

また、ベテラン社員が見たら”不審なメールだ”と感じるようなメールであっても、会社や業界の文化・慣習に慣れていない新入社員は”業務ではこんなメールも送られてくるんだ”と思って何の疑問も持たずに開いてしまうということも不思議ではありません。

そんなタイミングを狙って、

  • 🔹 人事部を装ったメール
  • 🔹 情報システム部を装ったメール
  • 🔹 先輩社員になりすましたメール
  • 🔹 取引先を装ったメール

が、“業務メールに見せかけて”届くのです。
そして、何の疑いもなくリンクをクリックしてしまう…。これが、標的型攻撃の怖いところです。

実際、筆者が訓練に関わっている企業では、既存社員と新入社員のクリック率を比較したところ、平均して3倍の開きがあることがわかったという事例もあります。


💡 訓練を行う前に気をつけたいこと

以上の通り、新入社員については不審なメールに騙されないよう、必要な知識を1日でも早くインプットする必要がありますが、新入社員に対して訓練を行う際には、いくつか特に注意すべきポイントがあります。

✅ 1. 「知ってて当然」と思わない

新入社員の多くは、「業務用メールってどんなもの?」というレベルからのスタートです。
セキュリティ以前に、メールの扱いにまだ慣れていない状態の人もいます。

まずは、

  • 「標的型攻撃って何?」
  • 「なりすましメールってどんなもの?」
    といった基本のキから、丁寧に教えてあげることが大切です。

基本のキがわかっていなければ、何を教えてもらっているのかさっぱりわからず、わからないことを聞くこともできずにそのまま流してしまい、教える方と教わる方の双方に認識のギャップが生まれてしまいます。

基本的な知識自体、新入社員がそれを知っているかどうかを確かめることから始めましょう。


✅ 2. 「だまされた=悪いこと」と思わせない

訓練の結果、万が一クリックしてしまったとしても、
「ダメじゃないか!」ではなく
「これは誰でも引っかかる可能性があるんですよ」と伝えることが大切です。

業務に慣れていない新入社員は失敗に敏感であり、失敗してしまったことがトラウマとなってしまうこともあります。それゆえに、失敗ではなく”成長に繋がる体験”と捉えてもらい、クリックしてしまったことが悪いことなのではなく、実体験を通じて攻撃者の手口を知ることができてよかった!と思ってもらえるよう誘導することをお奨めします。

最初に失敗を体験し、「次は気をつけよう」と思えたなら、それは立派な“学び”です。


✅ 3. 振り返りを一緒に行う

訓練をして終わりではなく、一緒に振り返る時間をつくりましょう。

  • どこが怪しかった?
  • どんなメールだったら疑うべき?
  • 怪しいと思ったらどうすればいい?

こうした問いかけを通じて、“自分で考える力”を育てることができます。

余裕があれば、新入社員自身に訓練を企画してもらって、実施結果と共に振り返りを行えば、新入社員にとっては大きな学びを得る機会になると思います。


🛡️ 新入社員にこそ伝えたいセキュリティの基本

標的型攻撃から自分と会社を守るために、
新入社員に伝えておきたい基本のルールはこちらです👇

✔ 業務メールにも“だまし”はある!

「会社のメールは安心」と思い込まず、“疑う力”を持つことが大切です。


✔「あれ?おかしいな」と思ったら、すぐ相談!

誰かに聞くことは恥ずかしいことではありません。
“報告する勇気”がトラブルを未然に防ぎます。

色々なことを吸収しやすい新入社員だからこそ、このタイミングを逃すことなく、報連相の習慣を身につけてもらうことに力を注ぎましょう。


✔ 「開かない」「クリックしない」「送らない」の“3ない”ルール

  • 📩 見知らぬ差出人のメールは開かない
  • 🔗 よく分からないリンクはクリックしない
  • 📤 怪しいファイルは送らない

この基本を守るだけでも、セキュリティ事故はぐっと減ります。
この機会に、不審なメールに気づくためのポイントや、不審なメールに騙されないために知っておくべきことを新入社員にインプットしましょう。


📘 訓練の工夫で「考える力」を育てよう

新入社員向け訓練では、座学だけでなく、実践的な体験を通じて「気づく力」を身につけさせることが大切です。

  • 💻 実際に送るメールを見せる
  • 🗣 「どこが怪しいか」をディスカッション形式で話し合ってもらう
  • 📊 簡単なクイズや診断テストで、楽しみながら学べる工夫も◎

新入社員が学ぶべきことは沢山あるため、セキュリティに関しては座学でサッと済ませてしまう企業もあるかもしれませんが、座学だけではすぐに忘れてしまい、身につかないことが多いので、体験を通じて記憶に留めてもらう工夫をすることも必要と考えます。

訓練メールに騙されたしまった体験は、座学で学んだ気になるよりもずっと記憶に残り、意識向上に繋がるものです。


🎓 まとめ:新人を守ることは、会社全体を守ること

新入社員は、企業の未来を担う大切な存在。
でもその反面、セキュリティの“最も弱い入口”にもなりかねません。

だからこそ、入社直後から「メールを正しく扱う力」「疑う視点」「報告する姿勢」を育てることが、
企業全体のセキュリティレベルを底上げする近道なのです。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。