
〜標的型攻撃メール訓練における情報露出リスクへの実務対応〜
標的型攻撃メール訓練において、訓練メールを開封した社員に対し、適切な注意喚起と解説を行ういわゆる「種明かしページ(これは訓練です!と説明するページ)」の存在は不可欠です。
しかしこのページが、検索エンジンにインデックスされて外部に公開されてしまうという事案が、実際に複数報告されています。
この記事では、検索エンジンによる種明かしページの登録(情報露出)を未然に防ぐために、実施担当者が確認すべきポイントを整理し、実務上の留意点を技術的視点も交えてお伝えします。
✅なぜ種明かしページの“公開”が問題になるのか
訓練の本質は「社員が攻撃に気づき、正しい行動をとれるようになること」にあります。その一環として、訓練メール内のリンクから遷移する説明ページ(いわゆる「種明かしページ」)には、訓練内容の意図や攻撃手法の解説、さらには内部向けの教育資料が含まれる場合があります。
このページが検索エンジンに登録され、誰でも閲覧できる状態になってしまった場合、以下のような問題が発生します。
- 訓練の目的や内容が外部に漏れることによる効果の低下
- 自社のセキュリティ教育体制に関する過剰な情報開示
- “標的型攻撃”というワードが公に出ることによる対外的な誤解・懸念
特に、取引先や採用候補者が企業名で検索をかけた際に、訓練用に設定している種明かしページがヒットし、誰でも内容が閲覧できる状態になっていれば、この会社は自社の情報をちゃんと管理できているのかな?などと不安に思われ、企業イメージや信頼性に影響を与えるリスクも否定できません。
ずっと公開しっぱなしになっているのでない限りは、第三者が実際にページを目にする確率を考えると、あまり深刻に考える必要は無いのかもしれませんが、それでもやはり、検索エンジンから辿れてしまうというのはあまり好ましくないと言えるでしょう。
✅なぜ検索エンジンに登録されてしまうのか ― 技術的要因の整理
検索エンジンへの登録(インデックス)は、Webサーバー上の情報をクローラー(自動収集プログラム)が巡回・取得することで行われます。以下のような対応が不十分である場合、意図せずページが登録されてしまう可能性があります。
📌1. ページ内に noindex 指定がない
HTMLの <head>
内に、以下のような記述がないと、検索エンジンはページの内容をインデックス対象とみなします。
<meta name="robots" content="noindex, nofollow">
📌2. robots.txt での制御が未設定
サーバーのルートに配置される robots.txt
ファイルで、クローラーの巡回を明示的に禁止する設定が行われていないケースもあります。
例:
User-agent: *
Disallow: /training/
📌3. ページがインターネットに公開されている
種明かしページのURLがパスワード認証やIPアドレスによるアクセス制限もなく、Web上でアクセス可能な状態にある場合、検索エンジンはそのURLを発見・巡回し、インデックス対象として処理することがあります。
📌4. URLの拡散・共有による副次的な登録
社員や関係者がSNSや社内チャットでURLを共有した際、リンク先がWebサービスにキャッシュ・登録されてしまい、間接的に検索対象となることもあります。
🔧訓練実施担当者が取るべき対策
💡 取り得る技術的対応
対策 | 概要 |
---|---|
noindex, nofollow メタタグの設定 | 検索エンジンによる登録・リンク追跡を明示的に禁止 |
robots.txt によるクロール制限 | クローラーの巡回そのものを制限 |
X-Robots-Tag HTTP ヘッダーの設定 | メタタグを設定する代わりに、X-Robots-Tag HTTP ヘッダーに noindex または none のいずれかを設定してレスポンスを返し、インデックスされないようにする |
URLパスワード保護 | 認証なしではページを閲覧できない状態にする |
アクセス制限 | IPアドレス、社内VPN、メールアドレスによる制限も有効 |
リダイレクトの設定 | 種明かしページ自体は社内サイト上など、社外からは見ることができない場所に設置し、リンク先からリダイレクトさせる |
📌 運用上の注意
- URLを外部共有資料に記載する際はアクセス範囲を明示(社内限定等)
- 検索エンジンへのインデックス状況をGoogle Search Consoleなどでモニタリング
- 訓練終了後のページ削除、または一時的公開による管理
- URL構造に企業名や「標的型攻撃」などのワードを含めない(検索上リスクが増大)
- 説明ページの内容は万一、第三者に見られても良い内容に留める
📝参考サイトnoindex
を使用してコンテンツをインデックスから除外する
https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/block-indexing?hl=ja
🛡️チェックリスト:公開前に確認すべきポイント
確認項目 | 内容 | 対応状況 |
---|---|---|
noindexタグが設定されている | <meta name="robots" content="noindex, nofollow"> | □ 済 □ 未 |
robots.txtでクロール禁止を設定している | /training/ 等のディレクトリ制限 | □ 済 □ 未 |
X-Robots-Tag HTTP ヘッダーの設定 | X-Robots-Tag HTTP ヘッダーに noindex または none のいずれかを設定 | □ 済 □ 未 |
パスワード保護や認証制限がある | ID/パスワードでのアクセス制御 | □ 済 □ 未 |
公開URLに企業名・訓練名を含まない | URLから訓練内容が推察されないよう工夫 | □ 済 □ 未 |
関係者への共有方法を制限している | 社外漏えいを防ぐ共有方法の指導 | □ 済 □ 未 |
🎯まとめ:訓練は“気づき”と同時に“信頼”の積み重ね
標的型攻撃メール訓練は、社員のセキュリティ意識を高めるだけでなく、企業としての“防御姿勢”を社内外に示す取り組みです。だからこそ、種明かしページの管理一つをとっても、細心の注意が求められます。
検索エンジンへの登録という“うっかりミス”を防ぐことで、訓練の信頼性を高め、情報露出リスクを未然に防ぐことができます。
訓練の効果を最大化し、かつ企業の情報資産を守るためにも、担当者として「見えないリスク」に備えた運用設計が求められます。
ちなみに、弊社で運用している「標的型攻撃メール対応訓練実施キット」のサービスでは、X-Robots-Tag
HTTP ヘッダーとrobots.txtを標準で設定し、IPアドレスによるアクセス制限やメタタグについては個別に設定することが可能となっています。