〜中小企業の経営者が知っておきたい、現実と対策〜
近年、サイバー攻撃のニュースを目にしない日はありません。標的になるのは大企業ばかりではなく、むしろ中小企業が「狙われやすい」と言われています。
その一方で、「うちには専門のセキュリティ担当がいない」「そもそも採用できるセキュリティ人材がいない」とお悩みの経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、なぜ中小企業でセキュリティ人材を確保するのが難しいのか、そしてその現実を踏まえた上で、どのような対策を取ればよいかを考察します。
❓なぜ中小企業にセキュリティ人材が集まらないのか?
実はこの問題、どの中小企業でも共通して起きていることです。その理由は主に以下のような点にあります。
● 給与や待遇で大手企業に勝てない
セキュリティ人材は、いま非常にニーズが高い分野です。そのため、待遇の良い企業や専門会社に人材が集中しがちです。
● 業務がセキュリティだけに絞れない
中小企業では、情シス(情報システム)担当が一人で何役もこなしていることが多く、専門的な仕事だけに集中できる環境がなかなかありません。
● 経営層の理解と投資が追いつかない
「セキュリティにお金をかけても、売上が増えるわけじゃない」と思われがちですが、実際は**「守るための投資」**として非常に重要です。
● 何をどう任せてよいかがわからない
そもそも「どういう人材が必要なのか」「何をしてもらえばいいのか」が明確でないままでは、採用も育成も進みません。
📌何も起きなければ仕事をしていないと見られてしまう。それがセキュリティ業務
セキュリティ人材の仕事は、いざという時の対応ができることはもちろんですが、その「いざという時」が起こらないようにすることが、そもそもやるべき仕事です。
しかし、この「何も起きない」というのがくせ者で、傍から見れば、何も起きていないのだから、何もやることが無い=仕事をしていないと見られてしまうということです。
例えば、不審なメールを入口でブロックして社内に届かないよう、セキュリティ人材が対策を行っていたとしても、社内には不審なメールが届かないことから、「不審なメールなんてめったに来ないのに、あの人いつも何やってんの?」と思われてしまうわけです。
他の社員からそんな風に思われてしまい、「あいつ、仕事もしないのに給料もらえていいよな」なんて陰口を叩かれたら、さすがに、その会社に居続けたいと思うセキュリティ人材はいないでしょう。
だからといって他の業務まで負担をさせたら、「自分がやりたいのはセキュリティ業務であって、その他の業務までやりたいわけじゃ無い!」となってしまい、やはり、その会社に居続けたいとは思わないでしょう。
たとえ大手企業であっても、優秀なセキュリティ人材は「この会社には自分がやりたいと思えるようなセキュリティ業務が無い」と言って独立したり、他社に転職してしまうものです。
中小企業のレベルでは、優秀なセキュリティ人材に来てもらえるだけの素地がそもそも無いということが、セキュリティ人材の確保を難しくしています。
🔍限られたリソースの中で、現実的にできる対策とは?
中小企業が、いきなり専門人材を雇うのは現実的ではないかもしれません。ですが、今できる範囲での対応策はあります。
● 社内の“セキュリティ係”を育てる
「プロのエンジニア」でなくても大丈夫。
既存の社員の中でITに強い人や、関心がある人を見つけて、小さな役割から任せてみましょう。
最近では、初心者向けのオンライン講座や無料セミナーも充実しています。
● 外部サービスをうまく活用する
セキュリティ専門の会社に相談したり、定期的なメール訓練や診断を委託するのも、ひとつの方法です。“アウトソーシング”は、専門人材を自社で抱えられない中小企業にとって、非常に有効な手段です。
● 経営層が「自分ごと」として捉える
万が一、情報漏えいやウイルス感染が起きれば、業務停止や取引停止、信用失墜といった深刻なダメージにつながることもあります。「リスクを見える化する」「どこが弱いのかをチェックする」だけでも、意識は変わっていきます。
🎯今日からできる、小さな第一歩
「人材がいない」からといって、何もできないわけではありません。
まずは、次のような行動からスタートしてみてはいかがでしょうか?
- 社内で情報セキュリティに関心がある人に声をかける
- セキュリティ対策チェックシートを使って自社の状況を整理する
- 標的型攻撃メール訓練や、簡単な社員向けセキュリティ研修を試してみる
- 地方自治体や独立行政法人(IPAなど)が提供している無料支援を活用する
とにもかくにも、まずは「セキュリティを確保する」とはどういうことなのか?を、会社全体で理解することが必要です。
社員全員がセキュリティについて理解を深めることで、自分たちでできること、また、専門家の手を借りないとできないことがはっきりと理解できるようになります。
中には、セキュリティについて興味を持ち、元々の業務と掛け持ちしながらでもやってみたいと思う人も出てくるかもしれません。
今でこそ、社会人になったと同時にセキュリティの世界に足を踏み入れたという人も増えてきましたが、セキュリティ業界のベテランには、以前はセキュリティとは全く関係ない業務をしていたが、縁があってセキュリティをやるようになったという方が多く存在します。
外から無理やり連れてこようと考えるよりも、自社の中で育てるというアプローチや、会社全体でセキュリティに強くなっていこう!と考えるアプローチを取る方が、中小企業にとっては可能性があるのではないでしょうか?
🛡️まとめ:専門家がいなくても、“何もしない”よりずっといい
セキュリティ人材の確保は、中小企業にとって確かにハードルの高い課題です。ですが、できることは必ずあります。
大切なのは「今いる人材や環境で、できる対策から始めてみる」こと。
そして「それだけでは難しい部分は、外部の力を借りて補う」ことです。
守るべきは、取引先との信頼、従業員の安全、そして会社の未来です。
経営判断のひとつとして、今こそ“守るための投資”を考えてみてはいかがでしょうか。