🚨「うちに限って」は通用しない時代

サイバー攻撃の被害事例は、ニュースでも業界団体のセミナーでも、繰り返し紹介されています。
ですが、社内の経営陣がこんな反応をしていませんか?

❌「自分たちが狙われるとは思えない」
❌「攻撃されてもIT部門が何とかするでしょ」
❌「大手じゃあるまいし、うちは関係ないよ」

このような“他人事マインド”のままでは、重大な判断の遅れに直結します。


🤔被害に遭った経営者の弁「自分事として考えていなかった」

「情報セキュリティは経営課題」と言われて久しく、ある程度の規模以上の経営者であれば、経営者同士の集まりなど、どこかしらの場でこの話題を耳にしているはずです。それも1回や2回ではなく、何度も。

にもかかわらず、実際に被害に遭って多大な損失を被るまで、情報セキュリティを「自分事」として捉えられず、多大な痛手を被って初めて「どうして自分事として捉えていなかったんだ・・・」と後悔するわけです。

被害に遭った経営者はこう言います。
確かに今まで何度もそういう話は聞いていたし、自分もわかっていたつもりだった。でも、今更こんなことを言ってもしょうがないが、自分事として捉えられていなかった。それに尽きる」と。


📌こんなことを言う経営者はサイバー攻撃を「自分事」として捉えられていない

❌「ウチは大丈夫か?」
❌「セキュリティ対策はちゃんとやっておいてよ」
❌「任せるからうまくやっておいて」

もし、経営者がこのようなセリフを言っていたら、その経営者はサイバー攻撃を自分事として捉えられていない可能性が高いです。

自分事として捉えられていたら、いざという時の一刻一秒を争う状況の中で、自分が下さなければならない経営判断の材料となる情報として、何が必要かを把握し、その情報がすぐに得られるようになっているかどうかを気にするはずだからです。

⭕「今ランサムウェアにやられたら何分で復旧できる?

こうした質問を投げかける経営者と、それに対して明確な回答をすぐに返せる情報セキュリティ担当部長がいる組織は、サイバー攻撃を自分事として捉えられている組織と言えます。

復旧できる体制が整っていても、数十分で復旧できるのと、数週間かかるのとでは、経営者が取るべき対応は全く変わってきます。こうしたことがイメージできているかどうかが、経営者のセリフに現れてくるわけです。

しかし、全て部下に任せきりで、いざという時に自分はどう行動するべきかを自分の頭の中に描けていない経営者は、サイバー攻撃を自分事として捉えられていない典型と言えます。


💥 実際に起きた経営レベルの被害

以下のような事例は、架空の話ではありません。

✅ 某製造業の例:

  • ランサムウェア感染により工場停止
  • 2週間以上の出荷停止
  • 取引先からの信頼失墜
  • その年の黒字計画が赤字へ転落

技術的な復旧だけでは済みません。
経営判断の初動ミスが、経営を左右するほどの致命傷になったのです。


🧠 経営層に“危機感”がない理由

多くの人が経営者にどれだけ注意喚起しても届かないのはなぜか?
それは、リアリティの欠如にあります。

✴ 実際に何が起きるのか想像できない
✴ 経営者として何を決断すべきかイメージできない
✴ そもそも、自分が意思決定の当事者だという認識がない

この“想像力の欠如”を埋めるには──
リアルな疑似体験が最も効果的です。

「どれだけ言ってもわかってもらえない」
こう感じているなら、リアルな体験を通じて、経営者の頭の中で欠如している要素を埋めることに注力することを検討するべきです。


✅ セキュリティ担当者が取るべき3つのアクション


🎬 ①「経営シミュレーション」の導入を提案する

標的型攻撃メールから業務停止までを想定した経営判断シナリオを用意し、
経営層に対して以下をシミュレーションさせます。

  • 最初に報告を受けたとき、何を確認すべきか
  • 被害の全貌が見えない中で、何を優先して判断するか
  • 社内外のステークホルダーへの対応はどうするか
  • 情報開示と業務継続の狭間で、何を決断するか

🟩 目的は「パニック状態の経営者を事前に体験してもらう」ことです。

サイバー攻撃による被害を受けたことが無い経営層は、いざという時に自分が何をすれば良いのかわからず、途方に暮れるはずです。

この時の自身の「無力さ」や「甘さ」を実感してもらうことで、如何に自分が自分事としてサイバー攻撃を捉えていなかったかを思い知ってもらうことができれば、シミュレーションは成功と言えるでしょう。

とはいえ、経営層に部下の前で恥をかかせるわけにもいかないので、プライドを傷つけずに、気づいてもらうべき所は気づいてもらえるシナリオ設計が、設計者の腕の見せ所と言えます。


🗂 ② 実在する“経営被害事例”をまとめて提示する

  • 同業他社が攻撃を受けた実例
  • 実際の損害額
  • 社長・役員が謝罪会見を開いた例

など、**“自分の立場に近い事例”**を集めて、「他人事ではない」と突きつけましょう。

📌 専門メディアやIPA(情報処理推進機構)などの公的資料も活用価値大です。


🎯 ③「経営リスクである」と明文化する

「セキュリティ=ITの話」と思い込まれているうちは、動きません。
そこで、以下のように経営レベルでのリスク認識を促します。

  • 情報漏洩=信用の失墜
  • ランサム被害=業務停止=収益悪化
  • 判断の遅れ=株価や評価の下落
  • 顧客・取引先離れ=中長期的経営不安

💡 “経営リスクの棚卸し”にサイバー攻撃を組み込むことが、突破口になります。


📣 経営層の目を覚ますことができるのはあなたしかいない

サイバー攻撃の初動で問われるのは、経営者の判断力。
そしてその判断力を目覚めさせられるのは──

🎯 あなた=セキュリティ担当者だけです。

技術的な防御策だけでは守り切れません。
「経営者を動かす」ことこそが、最大のセキュリティ対策です。

そして、経営者がサイバー攻撃を自分事として捉えていれば、その意識は組織全体に波及します。
標的型攻撃メール訓練が効果を発揮するには、経営層の意識も欠かせない要素の一つです。

✍️ 推奨アクションまとめ

項目やること補足
経営シミュレーション経営判断のロールプレイ演習想定シナリオの作成が鍵
実例の提示他社の被害報告を収集・共有IPA資料やメディア記事を活用
経営リスク化経営層とのリスク共有会議開催情報漏洩や業務停止の損失見積もりも有効

投稿者アバター
キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。