
👘 和装が当たり前だった時代、でも、今は「違和感」
江戸や明治の時代、日本人の服装といえば和装が当たり前でした。
着物や羽織は日常の風景に溶け込み、だれも違和感を覚えることはなかったでしょう。
しかし令和の現代、駅前で着物姿の人を見かけると、多くの人が**「あ、何かのイベントかな?」**と思うかもしれません。
つまり、かつて当たり前だった行動が、今では“特別なこと”に感じられるようになったのです。
これは、「違和感」が文化の変化を象徴している一例です。
💡「そうしていないと違和感がある」=文化が根付いている証
私たちが日常的に行っている多くの行動は、理屈ではなく**“そうしていないと気持ち悪い”**という感覚から生まれています。
たとえば──
- 🚗 シートベルトを締めていないと不安になる
- 🏠 靴を履いたまま家に入ることに抵抗を感じる
- 📲 スマホを充電し忘れると落ち着かない
これらはすべて、「そうするのが常識」という文化が浸透しているからです。
では、セキュリティの世界ではどうでしょうか?
- 「届いたメールのリンクをそのままクリックする」
- 「知らない送信元の添付ファイルを開く」
こうした行動に、あなたの職場では違和感を感じる人がどれだけいるでしょうか?
🚨 セキュリティは「ルール」から「文化」にするべき
多くの職場では、セキュリティに関する行動はルールとして定められていることが多いでしょう。
- 「この手順を守りましょう」
- 「このメールは開かないようにしましょう」
などなど、あなたの会社にも決められているルールがあるはずです。
しかし、ルールと文化の間には大きな違いがあります。それは、ルールは**“守るべきもの”である一方、文化とは“自然とそうしてしまうもの”**という違いです。
社員一人ひとりが、不審なメールを見たときに
「なんかこれ、おかしいな。確認しなきゃ気持ち悪い」
「このメール怪しいよな。すぐに上司に報告しないと」
と、ルールの有無に関係なく、あたりまえの事のように思えるようになったとしたら──
それは、組織にセキュリティ文化が根付いた証だと言えるでしょう。
🎯 “違和感”を育てるために、訓練担当者ができること
”セキュリティ教育は必要だ”として、セキュリティ教育研修や標的型攻撃メール訓練を実施しても、それを受ける当人が”やらされ感”を抱いたままでは、何も変わらないかもしれません。
セキュリティ文化を根付かせるために大事なことは、”やらされ感”を”やらないと気持ち悪い、落ち着かない”に変えていくことであり、研修や訓練はその目標に沿って設計、実施するべきであると考えます。
具体的には、以下のような仕掛けが考えられます。
✅ 1. 訓練頻度は“文化”の種まき
年1回の訓練では文化は育ちません。
ラジオ体操のように、繰り返しが習慣をつくり、違和感を生みます。
「あれ?今月は訓練やらないの?」と聞かれるようになったら、文化が育ちつつある証拠かもしれません。
✅ 2. フィードバックで“気づき”を可視化
訓練後、「開いてしまったらどんな危険があったか?」を解説。
「気づかないままだった怖さ」を体感してもらうことで、感覚が変わります。
✅ 3. 共有文化を育てる“仕掛け”作り
面白かった訓練、意外だった気づきなどを社内チャットや掲示板で共有できる場を設けましょう。
共感が広がることで、文化は組織に浸透していきます。
✅ 4. 気づいた人を“褒める”仕組み
セキュリティ報告や注意喚起があった場合には、感謝の声や表彰を。
称賛される行動こそが“当たり前”になっていきます。
✅ 5. “違和感センサー”を鍛える研修
攻撃事例やなりすましの見破り方などを、体験形式で学ぶ研修を取り入れましょう。
「これ、おかしいかも?」という感覚は、知識と経験からしか生まれません。
✨ 「違和感」は、訓練で育てることができる
文化とは、“違和感を覚える”ことから生まれます。
だからこそ、セキュリティ行動も、「そうしないと気持ち悪い」と感じるレベルまで昇華させなければいけません。
そしてそのためにできる最も現実的な方法が、定期的な訓練と社内教育の積み重ねです。
🏯 和装が当たり前だった時代から、今の洋装へと文化が変わったように──
セキュリティ行動も、“当たり前のもの”として、組織に根付かせることができるものです。
違和感は文化のはじまり。
今日の訓練が、明日の“違和感”を育てる第一歩かもしれません。
和装が当たり前だった世の中が、洋装が当たり前になるまでに何年もの時間がかかったように、
セキュリティ文化が会社に根付くまでには相応の時間が必要です。
少しずつ、でも着実に。
”やらないと気持ち悪い”と社員の誰もが思う組織を目指すことで、
あなたの会社も、いつしか、行動の“当たり前”が変わっているはずです。