💬「また訓練ですか?」その一言に心が折れそうになったあなたへ

「こんなに頑張って準備したのに、誰も反応を示してくれない」
「忙しいって言われて、訓練が疎まれる存在になっている気がする」

そんな声を、訓練実施担当者の方からよく耳にします。
自分自身、毎月のように訓練を実施しているので、実際に目の当たりにする機会も多いです。

なので、その気持ち、痛いほどわかります。
真剣に取り組んでいるほど、「無関心」や「反発」に心が削られていくものです。

「また訓練ですかぁ…(ため息)」などと言われると、
こちらもため息が出てしまいそうになりますよね。

でも、そんなあなたにこそ、お伝えしたいことがあります。


🌱訓練の目的は、「今の反応」を変えることではありません

「クリック率を下げること」や「社員に知識を与えること」——
もちろん、それも訓練の目的のひとつです。

しかし、もっと大切な目的があります。
それは、“セキュリティを考える文化”を社内に根づかせていくことです。

文化とは、一朝一夕では作れません。
最初は「面倒だ」「またかよ」と言われるかもしれません。
でも、何度も“当たり前のように続けること”でしか、文化は育ちません


🔍「関心がない人」にこそ、訓練は必要なんです

反応が薄い、関心を示さない、忙しいからと後回しにする——
そういった社員の方こそ、攻撃者から最も狙われやすい存在です。

サイバー攻撃の大半は、個人の油断や無関心を突いてきます。
つまり、関心がない人に気づきを届けることこそが、訓練の本質なのです。

だからこそ、関心を示してくれない人の存在に落ち込むのではなく、
「この人にどうしたら一歩目の気づきを届けられるだろう?」と視点を変えてみてください。


🧭担当者が向き合うべき“本当の相手”とは?

訓練担当者が意識すべきは、
訓練に前向きな人だけでもなければ
成果として数字に表れることでもなく

むしろ、「見えない壁のような無関心」に向き合うことなのです。

社内にセキュリティ文化が根づくまでには時間がかかります。
でも、あなたが継続して訓練を実施し、語りかけ続けることで、

「そういえば、最近こういう訓練が増えたな」
「昔よりも、怪しいメールに注意するようになったかも」

そんな小さな変化が、やがて“社内の空気”を変えていくのです


🔄【事例紹介1】最初は無反応だった組織が、変化した瞬間

ある企業では、情報システム部の一人が中心となって、標的型攻撃メール訓練を定期的に実施していました。ところが最初の頃は、

  • 「また来たよ、どうせ訓練でしょ」
  • 「セキュリティ担当って暇そうでいいよな」

といった冷ややかな反応が多く、訓練結果レポートを出しても、誰にも読まれない始末。
担当者は「もうやる意味があるのか」と感じていたそうです。

しかし、あるとき「実際の攻撃メール」が社内に届いたことで空気が変わりました。
訓練で似たようなパターンを経験していた数名の社員が、

「あれ?この件名、前に訓練で見たやつにそっくりだ」
「これ、本物じゃないと思います」

と気づき、情報システム部に通報。早期に封じ込めることができたのです。

その後、役員会議で「訓練のおかげで被害を未然に防げた」と紹介されたことで社内の関心が高まり、
今では「次の訓練はいつですか?」「他のパターンも体験してみたい」と声をかけられるようになったとのこと。

この事例が示しているのは、“訓練の成果”は、必ずしもその場で評価されるものではないということです。備えていたからこそ、いざというときに行動できる社員がいた——それが最大の成果です。


🔄【事例紹介2】社長名で訓練メールを出すことで役員の意識が変わった瞬間

ある企業では、BEC(ビジネスメール詐欺)が話題になったことで、訓練メールの内容を「社長から社員宛のメール」にする事を企画しました。

差出人を社長名にするので、当然、社長の事前許可が必要です。

そこで、訓練の企画内容を社長に提示したところ、社長が乗り気になり、社長名で訓練メールを出すことがトントン拍子で進み、訓練を実施したところ、社長からのメールということでクリックしてしまう人が続出。

この結果に社長も関心を示し、あちこちで社長がこの話題を周囲に話すことで役員も関心を持ち、その後は訓練の実施結果を毎回役員会に報告するという流れができました。

社長を始めとする役員の方々にセキュリティ対策に興味・関心を持ってもらえたことで予算も通りやすくなり、トップからのお墨付きをもらった形で訓練を実施することができるようになったことで、訓練を実施しやすくなるという副次的な効果も得られました。

この事例が示しているのは、”味方が増えれば組織は変わっていく”ということです。キーパーソンとなる人を味方につけていくことができれば、無関心な人ばかりの状況も変えることができるのです。


🚀訓練は、“社員の行動を変える”のではなく、“組織の文化を育てる”もの

訓練とは、「一度実施すれば完了」というものではありません。
それは、会社として“どういう価値観を大切にするか”という姿勢の表明でもあります。

あなたの取り組みは、すぐに結果が出るものではありません。
けれど、続けていくことでしか生まれない価値が、確かに存在します


🎁担当者の“気づき”が、文化の起点になる

訓練の成果は、社員の反応だけで測るものではありません。
それ以上に、訓練を通じてあなたが気づいたこと、学んだこと、感じたことこそが大切です。

  • なぜ社員は訓練に冷ややかなのか?
  • どうすれば関心を引き出せるか?
  • 何が“当たり前”として社内に浸透していないのか?

その気づきこそ、セキュリティ文化を形づくる第一歩です。


✨あなたの一歩が、会社の未来を変えます

誰も関心を示さないからこそ、あなたの存在に意味があります。
冷ややかな反応に心が折れそうになっても、
その壁を乗り越えようとするあなたの姿勢が、会社の文化を変えていく火種になります。

どうか、自信を失わないでください。
「やる意味があるのか?」と悩んだあなたにこそ、
今、この訓練が必要なのです。

投稿者アバター
キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。