
標的型攻撃メール訓練を実施する際、
「部署ごとにまとめて送る」べきか?
それとも
「社内の誰に届くか分からない形でランダムに送る」べきか?
ーーといった送信方法について、悩まれる訓練担当者も多いのではないでしょうか?
本記事では、それぞれの手法の特徴と選び方の視点、
さらに、**「判断のためのチェックリスト」**も交えてご紹介します。
🏢【部署単位でまとめて送付する】場合のメリット・デメリット
✔️メリット
- 部署ごとの比較分析がしやすい
- 同じタイミングで送ることで、研修・フィードバックが一斉にできる
- 部署ごとの業務状況に合わせて配信日を調整できる
❌デメリット
- 同じ部署の中で「訓練メールが来ている」という情報が広まりやすい
- 攻撃としてはやや現実味に欠けるパターン
曜日や時間帯など、業務のピークタイムが部署ごとに大きく異なるような場合は、部署ごとの状況に合わせて配信する方が、各部署との間でトラブルになりにくいということはあると思います。
また、不審なメールに関する情報が共有されやすい環境では、部署単位で一斉に送り、部署内で情報が共有されてしまう前に訓練メールが届いてしまうようにするのも一つの方法です。
メリットにもあるように、訓練実施後のフィードバックまで含めてワンパッケージとして実施したい場合は、訓練を数日に分けてランダムに実施してしまうと、初日に訓練メールを受け取った人は時間の経過と共に記憶が薄れてしまう可能性があるため、教育効果を考えると、全員が同日に訓練メールを受信できるように調整する方が望ましいでしょう。
🎯【ランダムに送信する】場合のメリット・デメリット
✔️メリット
- 誰にいつ届くか分からず、実際の攻撃に近い体験が可能
- 他の社員からの事前情報がないため、本来の反応が引き出せる
- 社員全体に均等に訓練の機会を与えられる
❌デメリット
- 先に訓練メールが届いた社員から情報を聞いてしまう可能性がある
- 一部の部署で業務時間中に対応が重なる可能性がある
社員数が多い環境でランダムに送信する場合は、同じ部署内でも先に訓練メールが届く社員と後から届く社員の時間差が大きくなってしまうため、一部の社員については、部署内で情報を共有された後に訓練メールを受信することになってしまう恐れもあります。
ただ、メリットにもあるように、ランダムに配信する場合は、同じ部署内でも受け取った人と受け取っていない人が生じるため、先に受け取った社員は訓練メールであるかどうかがわからず、本物の不審なメールとして対応せざるを得ないということで、報告まで含めて、本来あるべき対応が取れるかどうかをテストすることができます。
全員が同時に受信していると、不審なメールが届いたことに気づいても、全員が一斉に受信していることから「これは訓練ではないか?」という情報が共有されることになり、本来であれば行ってもらいたい「報告」という行為までに至らない結果となってしまう事も考えられます。
✅訓練メールを全て送りきるまでにかかる時間にも依る
訓練メールを送信する件数が多くなく、5分とかからずに全てを送りきるような件数であれば、不審なメールに関する情報が共有されてしまう前に訓練メールを送りきることができることになるため、部署別でもランダムでもあまり変わりはないということになります。
逆に、訓練メールを送信する件数が多く、朝から送って夕方までかかるような状況では、午前中に送った訓練メールに関する情報が昼休みに共有されてしまい、午後に訓練メールを受け取る人には訓練だと知られてしまっているといった事が起こりうるため、拠点単位ではそれぞれまとまった時間帯に届くよう調整するといったやり方も考えられます。
✅拠点やフロア構成、勤務形態にも依る
小さい拠点では情報も共有されやすいため、ランダムに送ると後から訓練メールを受け取る人は既に訓練だと知ってしまっている可能性があります。小所帯の部署宛に送るなら一斉に送る方式を取る方が良いでしょう。
また、リモートワークが中心だったり、席が個室形式で社員同士が顔を合わせることが少ないような会社であれば、ランダムに送っても良いかもしれません。
✅用意する訓練メールの種類にも依る
訓練メールを複数パターン用意するようなら、全ての訓練メールについて情報が共有されてしまうまでにはある程度の時間が必要となるため、ランダムに送っても良いかもしれません。
複数日に分けて訓練を実施する場合であれば、日ごとに訓練メールの内容を変えれば、前日の訓練メールの情報が共有されても問題ないので、ランダムに送っても問題は無いでしょう。
📌訓練メールを受け取った社員がどのような行動を取るかが鍵
訓練を実施しているといった情報、また、訓練メール自体の情報が他の社員に共有されない状況なら、訓練メールを受け取る社員は、いつ訓練メールを受け取っても、それが訓練メールだとは知らないことになりますので、ランダム・部署単位どちらで送ってもあまり変わらないことになります。
しかし、フロア内がオープンな環境で、誰かが訓練メールを受信していることを、周りの社員が気づきやすい状況だったりすると、ランダムで送信するというのはあまり適切では無いかもしれません。
このように、訓練メールを受け取った社員が他の社員に情報を共有するなど、具体的にどのような行動を取るか、また、会社や部署内でどのようなことが起きうるかが判断のポイントで、訓練メールを受信した際の各部署の状況をどこまで想像できるかで、ランダムに配信するのが適切か、それとも、部署別に送信するのが適切かが変わってくることになります。
🧭【判断に迷ったときのチェックリスト】
以下の項目に「はい」が多ければ、
✔️部署単位で送付する方が適している可能性が高いです。
「いいえ」が多ければ、
✔️ランダム配信の方が効果的かもしれません。
チェック項目 | はい / いいえ |
---|---|
部署別に訓練効果を比較して分析したい | ☐ はい ☐ いいえ |
業務やシステムの都合上、同時に全社配信するのが難しい | ☐ はい ☐ いいえ |
各部署で訓練後にフィードバック会を実施する予定がある | ☐ はい ☐ いいえ |
社内で訓練の情報が広まっても構わない | ☐ はい ☐ いいえ |
より実践的に「攻撃の再現性」を重視したい | ☐ はい ☐ いいえ |
社員の“油断”を再現したいので事前通知なしで実施したい | ☐ はい ☐ いいえ |
💡おすすめの運用スタイル:段階的ハイブリッド
- 初回は部署単位で丁寧に実施し、各部署の反応や傾向をつかむ
- 2回目以降はランダム送信に切り替え、実践的な訓練へ移行
- 目的や部署の反応に応じて柔軟に組み合わせるのが理想
社員数が多く、各拠点や部署の状況を把握し切れていない場合は、部署単位やランダムに送信することを幾度か行ってみて、その結果をつぶさに観察するとよいかと思います。
また、部署によって興味を惹きやすい、また、クリックしてしまいやすいメールの内容は異なりますので、より実践的に訓練を実施するのであれば、部署ごとに訓練メールの内容を変えて送信するのも一つの方法です。
部署単位とランダムのどちらが良いということでは無く、部署や拠点などの状況に合わせて、訓練メールを受信した際の社員の反応なども想像しながら、どちらで送信するのがより望ましいかを考えれば良いと思います。
その結果として、部署ごとに送信するケースもあれば、ランダムに送信するケースもあるというように、ハイブリッドに行うことがあっても良いと考えます。
🎁大切なのは“訓練目的”を明確にすること
訓練メールの配信方法を選ぶ際は、
「どちらが正解か?」ではなく、
**「どのような目的で訓練を実施しているのか」**を基準に考えることが最も重要です。
たとえば…
🔹 分析・教育を重視したい → 部署単位
🔹 実戦的な気づき・感度向上を重視したい → ランダム送信
といったように、訓練メールが不審かどうかを見分けられるかどうかに重きを置くのか、それとも、訓練メールを受信した後の「報告」対応が適切にできるかどうかに重きを置くのかなどによって、各社員にどのように訓練メールが届けばよいのか、その必要条件も変わってくることになります。
このように目的に応じた設計を考えることで、訓練の効果を最大限に引き出していきましょう!