
社員の読解力が不足しているという怖い現実
近年、リーディングスキルテスト(RST)の結果から、社会人の読解力低下が指摘されています。
一見簡単そうな文章であっても、「主語が何か」「結論はどこか」が正確に読み取れない人が増えているというのです。
【参考情報】若者はみんな読解力不足?日本企業が抱える「社員の読解力不足問題」とは
これは、企業の研修にも無関係ではありません。
「しっかり教育資料を作ったのに、全然伝わっていない…」
あなたが今、そのように感じているなら、その原因は、**読解力への“配慮不足”**にあるかもしれません。
📉読解力不足が引き起こす3つの“伝わらない問題”
作り手側は「読めばわかるはず」と思っていても、読み手の側には以下のような問題が起きている可能性があります。
✖ 教材を読んでも理解できない
難しい言い回しや長文によって、途中で読み手が“思考停止”してしまいます。
✖ テストの設問が読めずに間違える
内容よりも「設問の意味がわからなかった」が正答できなかった理由になっていることも。
✖ 研修に対する拒否反応が出る
「何を言ってるのか分からない研修=苦手なもの」と認識され、意欲が下がります。
🔍 POINT
教材が難しいからではなく、構造や表現が読解力に合っていないことが、伝わらない原因かもしれません。
情報セキュリティという分野はただでさえ難しく、興味を持ってもらいにくい分野であるだけに、教材に書かれている文章が理解しにくいとなれば、輪をかけて”伝わらない”ということになってしまいます。
✍ 読解力を前提にしない!伝わる研修資料づくりの4原則
✅ 原則1:一文一義で、短く区切る
NG例:
この件につきましては、社内のポリシーおよび業務フローを踏まえたうえで、必要に応じて上長へ報告してください。
OK例:
この件については、まず社内ポリシーを確認してください。
業務フローに従い、必要であれば上長に報告します。
💡「句点(。)で切る」だけでも、理解しやすさは格段に変わります。
✅ 原則2:抽象表現を避けて、具体的に言う
NG例:
リスクを意識して行動しましょう。
OK例:
不審なメールは開かず、上司または情報システム部に連絡してください。
📌「意識する」「配慮する」といった抽象語は、“何をすればいいのか”が伝わりません。
より具体的な言葉に置き換えて伝えるようにしましょう。
✅ 原則3:テキストだけで勝負しない
視覚要素(図・表・フローチャート) を活用して、読むのではなく「見るだけでわかる」構成にします。
🟦 例:報告フロー図
【不審メールに気づいたら】
受信 ➡︎ 開かない ➡︎ 上長へ連絡 ➡︎ 情シス報告 ➡︎ メール削除
👁 視線の流れを意識して作ると、説明不要になる場面も増えます。
✅ 原則4:重要な部分は“視覚的に目立たせる”
伝えたいキーワードを装飾しましょう。
- ❗ 太字で強調する
- 🟥 赤文字を使って注意喚起
- 📦 囲み枠でメッセージを浮き立たせる
📣 例:「次のようなメールは絶対にクリックしないでください」
🔴「ウイルスに感染しました」「あなたのアカウントが停止されました」などの文言がある場合は特に注意!
💬 理解を深める“確認のしかけ”を入れる
読みっぱなしにせず、「考えさせる」要素を入れることで理解度が高まります。
👇 例:問いかけ形式
このメール、どこが怪しいと思いますか?
選択肢:
A. ドメイン名が微妙に異なる
B. 緊急性をあおる文言
C. 個人情報入力を求めている
正解後に、理由の解説を追加することで「なるほど」と腑に落ちる構造に。
🧩 教材を“読む相手の頭の中”に合わせるという視点
読解力が高い人が書いた資料ほど、
「読み手も同じように理解できるだろう」と思い込みがちです。
しかし現実には、
「主語と述語がズレてると意味がつかめない」
「2つのことを同時に説明されると混乱する」
という人も少なくありません。
🎨 マンガには「伝わる研修資料づくりの4原則」が詰まっている
実は、社員教育にマンガを活用することは、**読解力への配慮として非常に理にかなっています。**というのも、マンガという形式そのものに、以下の「伝わる研修資料づくりの4原則」がすべて内包されているからです。
- 一文一義の原則 → セリフが短く簡潔に設計されている
登場人物の吹き出しは自然と短文になり、伝えるべき要点がコンパクトに表現されます。
- 抽象的表現を避けて具体的に → キャラクターの行動やセリフが具体的
「やってはいけないこと」や「正しい対応」が、ストーリー仕立てで自然と具体化されます。
- 図解・ビジュアル活用 → そもそも視覚媒体として情報が整理されている
場面ごとの構図やフローが視覚的に提示されるため、複雑な流れも理解しやすくなります。
- 重要情報の強調 → 表情・効果音・コマ割りなどで自然に視線誘導
キャラクターの驚きや焦りを通して、注意すべきポイントが感情的にも印象に残ります。
📌つまり、読解力に不安のある社員でも、“読む負荷をかけずに理解できる”のがマンガの強み。
伝わることを第一に考えるなら、マンガはまさに「理想の教材形式」といえます。
例えば以下は、標的型攻撃メール対応訓練実施キットでご提供しているマンガを活用したセキュリティ教材の1ページです。

✅ まとめ
この記事も読み手にきちんと伝わる構成・表現になっているかどうか?というと不安なところはありますが、少なくとも、”正しく読み取ってもらえるか”を考えながら作成しているかどうかは、アウトプットに大きな影響を及ぼす要素であると考えます。
📌 読解力不足は、教材の届け方を見直すきっかけに
📌 資料のわかりやすさは、研修効果に直結する
📌 “読みやすさを設計する力”が、これからの教材設計者に求められている
🔰 読み手に対して「伝わる設計」ができているかどうかを常に見直す。
作り手は常に忘れてはならない、大事なことであると思います。