4/1に新しい元号が発表されましたが、
早速、新しい元号への切り替えに便乗した詐欺の類が発生していますね。

新しい元号への切り替えに伴ってシステムを更新するので。とか、
新元号への切り替えに関する注意事項について。とか、

もっともらしい謳い文句で添付ファイルを開かせようとしたり、不正なサイトにアクセスさせようとする手口が使われることは容易に想像がつくだけに、当面、注意が必要だと思います。

特に今年はGWが10連休となるだけに、休み前を狙ってマルウェアに感染させ、会社が休みに入り、監視の目や、イザという時の即応体制が緩くなったところを狙って侵入できないか?と考える犯罪者も少なくないのではと思います。

折角の10連休だけに、大いに楽しみたいものですが、犯罪者はこうした隙を狙ってくるので仕方ありませんね。

さて、話は変わりますが、ビジネスの現場では「戦略」と「戦術」という言葉がよく使われます。

しかし、標的型メール訓練の実施過程において、「戦略」や「戦術」という言葉が使われているケースはあまり見かけたことがありません。

標的型メール訓練の実施を請負う業者からの提案でも、「戦略」と「戦術」という言葉を明確に使い分けた提案を目にされたことは有るでしょうか?

ちなみに、「戦略」と「戦術」という言葉、ビジネス全般においても、この2つについての理解は基本の「キ」とも言えるものですが、この2つの違いについて明確な理解ができておらず、「戦術」にばかり目が行ってしまう。

ということはありがちです。

例えば、

標的型メールを開かせることで従業員にショックを与えたい。

と考えるあまり、

従業員の誰もが開いてしまいやすいと思われる訓練メールの内容を一生懸命考える。

というのは、戦術に目が行ってしまっている例の一つです。

年度の初めという、今、このタイミングこそ、「戦略」と「戦術」がどう違い、それぞれどのように使い分けて考えるのか?この際、きちんと理解しておきませんか?

「戦略」と「戦術」の違いとは?

「戦略」を一言で言い表すと、「目標」を達成するための「筋書き」「シナリオ」です。

例えば、「東京から大阪に旅行に行く」という「目標」に対し、優雅な旅行にするのか?それとも、できる限り出費を抑える旅行にするのか?といった、具体的な行き方を考えるのが「戦略」に相当します。

そして、考えた「戦略」を実現させるために、用いる具体的な「手段」「方法」が「戦術」に相当します。

例えば、優雅な旅行にするなら、「一流ホテルのスイートルームに宿泊する」というのが「戦術」に相当します。

こうした例えで説明されれば、「戦略」と「戦術」の違いについて、「ああ、そうか」と納得するかと思いますが、次の一文はどうでしょうか?

私は「東京から大阪へ行く」という目標に対し、「陸路で行く」という戦略を採用し、大阪までの移動時間を節約するため、「新幹線で行く」という戦術を取ることにした。

この一文を読んで、何か疑問や違和感を感じるでしょうか?

ここでは「陸路で行く」ということが「戦略」として使われていますが、陸路で行くというのは「手段」「方法」なので、実はこれは「戦略」ではなくて「戦術」に相当するのですが、「戦略」と言われて納得してしまう方は少なからずいると思います。

ぱっと見では違いがよく分からない。という事があるのと同じように、「戦術」が「戦略」として誤って語られたとしても、ちょっと聞いただけでは、すぐにその違いに気づかないことが、実は往々にしてある。

「戦略」と「戦術」の違いについて、様々なビジネス書で語られ、多くのビジネスシーンにおいて、戦略と戦術が混同され、戦術ばかりに目が行ってしまうケースが後を絶たないのは、こうしたややこしさがあるからかと思います。

「戦術」にばかり目が行ってしまうのは、「目的」設定を間違えているから

「東京から大阪に旅行に行く」という「目標」を達成するための 「戦略」として、本来は「戦術」であるはずの「陸路で行く」という「方法」が設定されてしまったのは何故でしょうか?

それはひとえに、「東京から大阪に旅行に行く」という「目標」を何故設定しているのか、その「目的(WHY?)」が 「大阪に行く」ということに設定されてしまったからに他なりません。

「大阪に行く」ということが目的なので、その目的を実現するためのアイデア(方法論)として、 「陸路で行く」「空路で行く」という「方法」が挙げられることとなり、結果、「陸路で行く」ということが「戦略」として採用され、「夜行バスで行くか」「新幹線で行くか」といったことが「戦術」として語られる。といった話になるというわけです。

「東京から大阪に旅行に行く」という「目標」は「大阪に行く」ことが「目的」である。と言われると、何の疑問も持たずに納得してしまいそうになりますが、 よくよく考えると「大阪に行く」には「WHY?」の答えとなる情報がなく、何故大阪に行くのか?その理由についてはさっぱりわかりません。

つまり、WHY?に対する答えが無い「大阪に行く」という言葉は、「東京から大阪に旅行に行く」という「目標」 に対する「目的」にはならない。ということです。

「目的」にならないものを「目的」として設定してしまう。これが「戦略」と「戦術」を混同してしまい、「戦術」にばかり目が行ってしまうことに繋がる落とし穴となるものです。

「目標」に対する「目的」「WHY?」を考えよう

「戦略」とは、「目標」を達成するための「道筋」となるものですが、同時に、「目標」を設定した理由となる「目的(WHY?)」に対する答えとなるものでもあります。

言い換えれば、

ある理由によって「目的」が設定され、
その「目的」を果たすために「目標」が設定され、
その「目標」に至るために、そこに至るまでの道筋となる「戦略」が設定される。

ということです。「目標」は設定するが、その目標を設定した理由・背景となる「目的」がおざなりでは、正しい戦略が立てられず、結果、戦術を戦略と勘違いしてしまったり、戦術ばかり考えてしまうという結果になりかねません。

また、戦略が明確でないことから、方向性の違う戦術が乱立し、プロジェクトが迷走してしまうということもあるでしょう。

標的型メール訓練で言えば・・・

標的型メール訓練に当てはめて言えば、「開封率を下げる事」「目標」として設定し、この目標を達成するために、「毎月訓練を実施しよう」ということを「戦略」として計画する。ということは有るかと思います。

しかし、ここで考えて頂きたいのですが、「開封率を下げる事」というのは、どのようなWHY?の答えとなるものなのでしょうか?

開封率が下がれば、本物の標的型メールによる被害に遭う確率が下がるから。というのはもっともらしい答えですが、果たしてそれは本当でしょうか?

「目的」「WHY?」が正しく設定されれば、その目的を達成するための「目標」も自ずと明確になります。しかし、「目的」「WHY?」が無視され、「目標」ありきで考えてしまうと、戦略も当然、間違ったものとなってしまいます。

もし、あなたが今、本年度の標的型メール訓練の内容を考えている最中であったり、もしくは、既に計画を立てて準備を進めているという状況であるなら、

その訓練を実施する「目的」は何であるのか?
また、その「目的」はどのような「理由」によって設定されたものであるのか?

を改めて考えてみて欲しいと思います。もし、「目的」がはっきりしていなかったり、何故、その目的を設定したのか?の理由が言葉にできない。ということなら、一度立ち止まって、目的について考えてみてもよいのではないでしょうか?