📘セキュリティに資産価値以上のコストをかけるのは本末転倒?

「セキュリティ対策にはコストがかかる」とよく言われます。
たしかに、守るべき資産が1億円しかないのに、2億円のセキュリティ対策費用が必要だとすれば、「本末転倒ではないか?」と感じる方もいるでしょう。

しかし、セキュリティ対策が守っているのは“目に見える資産”だけでしょうか?
今回は、「資産価値以上のコストをかけてでもセキュリティ対策を行う意味」について掘り下げます。


🔍本当に守るべきは「金額」だけではない

資産とは、銀行口座の預金や製品在庫、不動産などの「目に見えるもの」だけに限りません。
近年では以下のような無形資産こそが企業の存続を左右するようになっています。

資産の種類
顧客の信頼一度失えば回復に長年かかる
社会的信用取引停止・上場廃止のリスクも
ブランドイメージ評判が落ちれば売上や採用にも影響
業務継続性ランサムウェア被害で全社業務が停止
人財情弱企業とみなされて優秀な人材が来てくれない

たとえば、ランサムウェア被害で長期間システムがダウンすれば、取引停止、株価暴落、顧客離れ、人材流出といった連鎖的損害が起きるのです。


🧠セキュリティ対策は「保険」である

保険に2億円かけて1億円の資産を守るのは意味がないと思いますか?
それでも、実際に命や信用を失う可能性があるなら、保険としての価値はあるのです。

重要なのは、「確率×損害額」というリスクの期待値であり、
損害額が致命的なものであれば、たとえ発生確率が低くても備えは必要です。


🧠セキュリティ対策は営業の「武器」でもある

セキュリティ対策は「保険」であると考えることに同意はできても、出ていくコストであることに変わりはないので、できれば払いたくないと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、営業において競合他社との比較になった際、他社の方がセキュリティ対策をしっかりやっていて、社員の誰もがセキュリティについて高い意識を持っているということが対外的に知られていたらどうでしょうか?

顧客はセキュリティに関してより安心できる他社の方を選んでしまう可能性が高くなってしまうのではないでしょうか?

セキュリティ対策は一見すると”単なるコスト“と思ってしまいがちですが、企業としての信頼性、また、同業他社に対する競争優位性を高めることに繋がると考えれば、企業の成長に向けた投資として積極的に行うべきもので、ケチる方がどうかしていると思えてくるのではないでしょうか?


🏭現実の企業事例:「あの時、対策していれば…」

ある製造業A社では、セキュリティ投資を後回しにしていた結果、
海外からの標的型攻撃メールにより顧客情報が漏洩。
その被害総額は見積もりで3,000万円だったが、
失った顧客との取引停止により、年間2億円の売上が失われたという実例があります。


🛡️“価値の見えない資産”を守る覚悟があるか

結論として、セキュリティ対策は「損得の計算」で判断すべきことではなく、
守るべきものが何か、それを失ったときに会社は生き残れるのかという観点で考える必要があります。

また、近年では、セキュリティに対する意識を持っているか、また、どのような考えを持って対策に取り組んでいるかが、企業の価値を計る指標の一つにもなりつつあります。

失ってから大事さに気づいても手遅れであり、それを取り戻すためには、失ったもの以上の”手間”と”コスト”と”時間”がかかることを、私たちは改めて認識すべきです。


📝まとめ

  • セキュリティ対策は、金額ではなく「信頼・継続性・信用」を守る行為
  • 対策費用が資産額を超えていても、リスク次第では正当化される
  • セキュリティは未来への保険であり、長期視点での投資判断が重要

数字では計れない価値、御社では認識されていますか?

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。