📝はじめに

標的型攻撃メール訓練を実施するにあたって、訓練メールの本文をどう作るかは非常に重要なポイントです。

リアルな内容にするあまり社員を過度に驚かせてしまったり、逆にあまりに非現実的で見抜かれてしまったりと、「ちょうどよい加減」を見つけるのは難しいもの。

簡単すぎても、逆に難しすぎても、社員からはそっぽを向かれてしまいかねません。

この記事では、訓練メールの本文を作成する際に考慮すべき視点と作成ステップをわかりやすくご紹介します。


🔍本文作成で考慮すべき5つのポイント

① リンクをクリックさせる“目的”・”理由”を明確にする

  • 資料の確認?
  • アンケートへの回答?
  • 社内システムの利用通知?
    などなど。。。

👉メールを読む人が”リンクをクリックしなければ”と思ってもらう理由をリアルなシナリオで構築しましょう。リンクの見せ方もクリックを誘導する重要なポイントです。

② 社内でよく使われる言い回しを意識する

  • 通常の業務連絡とそっくりな文体にすることで、リアリティが倍増します。
  • 社内システム名・部署名・署名などもリアルに。(但し、実在する名称は避ける)

👉違和感を感じさせないコツは、普段見慣れている言い回しを使うことです。見慣れているというだけで警戒心は緩むものです。

👉リアルさを追求するあまり、実在する部署名や個人名などを使ってしまいがちですが、実名を使うことでトラブルに繋がる場合もありますので、あえて実名を使う場合は事前に了解を得ておくなどの調整が必要です。

③ ターゲット層のITリテラシーに合わせる

  • 全社員向けなら“わかりやすさ”重視
  • 管理職や情報システム部向けなら“巧妙さ”を重視

👉「こんな難しい内容、私には無理!」と思われてしまうと、学ぼうとすることをそこで諦めてしまいかねませんし、逆に簡単すぎると「こんな訓練やったって無駄だろ」と思われてしまいかねません。

ターゲットがどれくらいの知識を持っているのかを想定しながら、ちょうど良いと思われるレベルを探りましょう。

④ 日常の業務タイミングを踏まえる

月初/月末、繁忙期/閑散期など、いつのタイミングを狙って訓練を実施するかは、結果に大きな影響を与えたり、訓練実施時のトラブルにも繋がりかねないだけに、よく考える必要があります。

余裕があるときなら騙されないけれど、余裕が無くなると騙されやすいといった場合、どちらのタイミングで訓練を実施するべきか?は悩ましいポイントです。

今回の訓練では組織として何を得たいのか?といったことも考えながら、適切な実施タイミングを探ることが必要です。

⑤ 訓練後に活かせる「違和感ポイント」を散りばめる

  • 不自然な日本語
  • 差出人のドメインが微妙に違う
  • 署名が定型と違う
    → こうした違和感を後の研修で取り上げやすくしておくと効果的。

👉折角訓練を実施するのですから、成長を実感できる”学びのポイント“を用意しておくことが必要です。リテラシーレベルに合わせて複数のポイントが散りばめられているとベターですね。


🛠訓練メール本文 作成5ステップ

Step 1️⃣:訓練の目的を明確にする

「クリックを防ぐ力を養いたい」「添付ファイルの開封を抑制したい」など、何を学ばせたいかを明確にします。まずは考えられる目的を列挙して、優先順位を付けてみましょう。

この最初のステップをしっかり検討することで、後のステップがスムーズに進むかどうかが決まります。逆に、このステップがおろそかになっていると、後段のステップでメンバーの意見が分かれ、シナリオが二転三転して、なかなか内容がまとまらないといったことにもなりかねないので注意してください。

Step 2️⃣:訓練対象者の業務や習慣を把握する

部署・役職・使っている業務ツールなどを踏まえ、STEP1で考えた目的を達成するのにふさわしいと思われるリアルな背景設定を考えてみましょう。

Step 3️⃣:訓練メールのシナリオを考える

  • 件名
  • 差出人名
  • 誘導文とURLの記載位置
  • 署名情報(フッタ情報)
    などを含めた“完成形”をイメージ。

Step 4️⃣:実際にメール本文を作成する

  • フォーマル/カジュアル、どちらの文体にするか
  • 読ませるか、流し読みでも引っかかるか
    といった文体バランスに注意。

Step 5️⃣:レビューと調整

  • 社内で複数人にチェックしてもらい、「リアルか」「騙される余地があるか」を検証。
  • 必要があればテスト配信も行うと良いでしょう。

独りよがりで作成してしまうと、他の社員から見て”ちょっとズレてる”訓練メールを作成してしまうことがありますので、できるだけ複数名に確認してもらって、意見をもらうことをお奨めします。


🎯実例サンプル

以下は、5ステップに沿って作成したシナリオのサンプルです。あくまで一例ですが、”こんな流れで作成するのか”といったイメージを掴んでいただけたら幸いです。

✅ Step 1️⃣:訓練の目的を明確にする

目的:
「普段使っている社内ポータルやアンケート依頼を装ったメール」に対し、安易にクリックしない判断力を養う。また、「差出人情報や文中の違和感を見抜く力」を確認する。


✅ Step 2️⃣:訓練対象者の業務や習慣を把握する

対象者:

  • 本社勤務の一般社員・中堅社員(ITリテラシー中程度)
  • 普段から社内アンケートにTeamsフォームやGoogleフォームで回答している
  • 業務連絡はOutlookで受信、業務が忙しいときは流し読み傾向あり

✅ Step 3️⃣:訓練メールのシナリオを考える

▼件名例:
📩【社内アンケートのお願い】勤務環境改善について(回答5分)

▼差出人:
人事総務部 soumu@company-hr-support.info
※実際のドメインと微妙に異なる偽アドレス

▼導入文:
平素よりお世話になっております。
このたび、社内勤務環境に関する簡単なアンケートを実施しております。つきましては、下記リンクよりご回答をお願いいたします。

▼本文中リンク:
【アンケートはこちら】
https://bit.ly/xxxxxxxx ←実際はフィッシングサイト風の訓練ページ

▼締め:
※本アンケートの回答期限は○月○日(金)17:00までとなっております。
お忙しいところ恐縮ですが、ご協力のほど何卒よろしくお願いいたします。

▼署名:
――――――――――――――――
株式会社〇〇〇〇
人事総務部 担当:山田
Mail: soumu@company-hr-support.info
Tel: 03-1234-5678


✅ Step 4️⃣:実際にメール本文を作成する

以下が、完成した訓練メール本文です(テキスト版):

📩件名:【社内アンケートのお願い】勤務環境改善について(回答5分)

平素よりお世話になっております。
人事総務部です。

現在、勤務環境の改善を目的とした社内アンケートを実施しております。
お忙しいところ恐縮ですが、以下のリンクよりご回答をお願いいたします。

👉【アンケートはこちら】
https://bit.ly/xxxxxxxx

所要時間は5分程度です。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

――――――――――――――――
株式会社〇〇〇〇
人事総務部 担当:山田
Mail: soumu@company-hr-support.info
Tel: 03-1234-5678


📌まとめ

訓練メールの本文作成は、社員のリアルな日常に寄せつつ、巧妙な違和感を演出する“演技”のようなもの。作り込みすぎず、でも甘すぎず——このバランスをうまくとることが、効果的な訓練につながります。

あなたのメール1通が、会社の未来を守る力になります。

投稿者アバター
キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。