SOCサービスを契約しているから大丈夫

そんな安心感を持っていませんか?
確かに、高度な知識を持つセキュリティ人材を自社で雇うのは難しく、SOCサービスは中小企業にとって頼れる存在です。

しかし 「外注すれば安心」 という思考は危険です。
SOCサービスの実態を理解し、自社でも想定外の事態に備えることが欠かせません。


✅ SOCサービスのメリット

  • 24時間365日体制でログを監視
  • インシデント発生時に迅速な通知やアドバイスが得られる
  • 高度人材を確保しにくい中小企業にとって有効な選択肢

➡ ここまでは間違いなく「ありがたい存在」と言えます。


⚠️ しかし「万能」ではない

  1. SOCの人員にも限界がある
    • 大規模攻撃が同時多発すれば、全ての顧客に即時対応するのは不可能。
    • SOC側では「トリアージ(優先順位づけ)」を行い、対応が遅れる企業が出る。
       
  2. サービス範囲の誤解
    • SOCが「攻撃の検知・通知」まで対応するのか、「復旧・再発防止」まで担うのかは契約内容次第。
    • 契約の範囲外では「アドバイス止まり」というケースも少なくない。
       
  3. 想定外の攻撃には間に合わない可能性
    • 新しい手口のマルウェアや標的型攻撃が発生した際、対応が後手に回るリスク。

SOCサービスは一言で言えば、セキュリティ人材を複数の会社で共有するサービスです。
当然、自社専任ではない以上、他社の対応にかかりきりになってしまっていたら、自社の問題には対応してもらえません。

攻撃者側はこれをわかっているので、本気で攻撃を成功させようと思ったら、SOCサービス側の対応能力を超える攻撃を仕掛ければよいということになります。

このような事態になったときに、果たして自社に対応してもらえるかどうかというと、疑問符が付いてしまうはずです。

SOCサービスの営業担当者は「いざという時は迅速な初動対応ができますよ」と言うかもしれませんが、それは自社に対応できる人的な余裕がSOCサービス側にある時だけです。SOCサービスの人員は無限ではありません。

SOCサービスが提示している「免責事項」には、想定を超える事態に対しては「一切の責任を負いません」と書かれているはずです。


📌SOCサービスと共有型のレンタルサーバサービスはとても似ている

一つのものを複数人で共有するという点では、SOCサービスは「共有型のレンタルサーバサービス」と似たようなものと言えるかもしれません。

共有型のレンタルサーバサービスは、サーバ設備を複数のユーザーで共有することで、自社では到底購入・運用ができないようなサーバ設備を手頃な価格で使えるというようなものですが、アクセス者が多いWebサイトを運営しているユーザーばかりが集まり、アクセスが集中してサーバの処理能力を上回ってしまえば当然、その影響を受けて自社のサイトにアクセスできないといったことが起こります。

SOCサービスも、サービス側の人員が対応できる量を上回る攻撃が発生してしまえば当然、対応してもらえない企業も出てくるわけで、今後は、レンタルサーバサービスにも良し悪しがあるのと同様に、同じSOCサービスでも、経営方針によっていざという時の対応に差が出てくるであろうことは想像に難くありません。

その意味では、SOCサービスさえ契約すれば安心と考えるのは間違いで、SOCサービスを契約するにしても、「高いお金を払っているのに、いざという時には役に立たなかった」といったことにならないよう、費用と対応のバランスを考えて、どのSOCサービスを利用すべきか吟味することが必要でしょう。


💡 自社で備えるべきこと

  • 初動対応のルール化
    → SOCからの通知を受けた時に、誰がどのように動くか社内で事前に決めておく。
  • バックアップと復旧計画
    → SOCが検知しても、復旧に時間がかかれば業務は止まる。自社のBCP(事業継続計画)が不可欠。
  • 社員教育
    → 不審メールを開かない、早く報告する、といった基本動作がSOCの負荷を減らす。
  • 「自社で守れる範囲」を明確にする
    → 外注に丸投げするのではなく、SOCと役割分担を意識する。

SOCサービスを契約しているからといって、SOCサービスに頼り切りになるのは危険です。
ましてや、自らSOCサービス側の負荷を増やすような行為をすることは自殺行為です。

本当に自社を守ることを考えるなら、SOCサービスに負荷をかけないよう、自ら守れるところは守り、SOCサービスに頼れない時のことも想定して備えるべきでしょう。


🎯まとめ

SOCサービスは「頼れる存在」であることは間違いありません。
しかし、 「外注すれば安心」という過信こそが最大のリスク です。

  • SOCに任せる部分
  • 自社で担う部分

この役割分担を明確にし、最悪のシナリオを想定して備えることが、中小企業における真のセキュリティ対策といえるのではないでしょうか。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。