標的型攻撃メールによる被害が後を絶たない中、

「社員が不審なメールに気づけるようになるにはどうすればよいか?」
という問いに、真正面から取り組む企業が増えています。

とはいえ、初めて訓練を担当する方にとっては、

どこから始めればよいのか?
どのような順番で訓練をすれば効果的か?
社員には何を身につけてもらえばいいのか?

といった悩みが尽きません。

本記事では、社員が「不審なメールに気づく力=サイバーリテラシー」を段階的に高めるための、訓練の進め方と優先すべきテーマについて考察します。


🔰 STEP 1:まずは全体像をつかもう!訓練ステップの全体図

社員にリテラシーを定着させるには、「気づく → 立ち止まる → 報告する」という一連の行動を反射的にできるようにすることがゴールです。そのためには、以下のような段階的アプローチが有効です。

ステップ目的成果指標(KPI)
① 現状診断今のリスク感度を可視化クリック率、報告率
② 基礎教育「気づく目」を育てるテスト正答率
③ 初級訓練怪しいメールに慣れる報告率の定着
④ 実戦訓練判断力を鍛える誤クリック率の低下
⑤ 効果測定改善と報告経営レポート用資料化

📝 ポイント
「いきなり難しい訓練」は逆効果。段階的なレベル設計が成功の鍵です。
実践さながらに高度に偽装された訓練メールを用いていきなり訓練を行っても、「こんなの見分けられるわけないだろ!」と反発されて参加意欲を削いでしまうのがオチです。

逆に、リテラシーレベルが高い社員が集まるような職場でやさしいレベルの訓練メールを送ったりすれば、「こんなレベルの低い訓練やったってしょうがないだろ!」と、不満を持たれかねません。

そうならないためには、自社の社員のリテラシーが今どの段階にあるのか?を把握することが欠かせません。


🧠 STEP 2:社員に身につけてほしいリテラシーの優先度

数あるセキュリティリスクのなかでも、最も基本的かつ重要なスキルは以下の6つです。
この順番で重点的に教育・訓練を設計すると、社員の“気づく力”が効率的に向上します。

✅ 優先度1:安全なドメイン名と不審なドメイン名の違いの理解

  • ドメイン名とは何かを知っているか
  • メールとURLからドメイン名を判断できるか

✅ 優先度2:リンクと添付ファイルの確認癖

  • マウスオーバー(PC)やリンクの長押し(スマートフォン)でURLを確認できるか
  • 拡張子やマクロ付きファイルの危険性を知っているか

✅ 優先度3:差出人情報の信頼性チェック

  • メールアドレスと表示名が一致しているか
  • ドメイン名が似せられていないか

✅ 優先度4:「急いで対応」に惑わされない思考力

  • 「今すぐクリックしないと…」という表現に冷静でいられるか
  • ウイルス感染を装う“警告音”に驚かないか(サポート詐欺対策)

✅ 優先度5:個人情報・パスワード入力の慎重さ

  • 偽ログインページやGoogleフォームに安易に情報を入力してしまわないか

✅ 優先度6:気づいたら報告、即アクション

  • 不審さに気づいた際、指定された連絡先への報告をためらわずにできるか

🎯 STEP 3:優先度別に訓練テーマを決めよう

それぞれのリテラシーに対応する訓練テーマの一例としては以下のようなものが挙げられます。

推奨訓練テーマシナリオ例
リンク確認訓練怪しいURLを含む請求書メール
ドメイン判別訓練「micros0ft-support.com」からの通知
サポート詐欺訓練「ウイルスに感染しました!」と警告音
偽ログインページ訓練業務用ポータルを模倣した認証画面
報告習慣定着訓練簡単なフィッシング疑似メール

💡 補足
サポート詐欺型の訓練では、“焦らせて冷静さを奪う手口”に触れる絶好の機会。音や演出を加えることで、記憶に残りやすくなります。


📊 STEP 4:成果は“見える化”して経営層へ報告!

訓練の成果は、必ず数値で“見える化”して経営層に報告しましょう。
報告資料に含めるべきポイントは以下の3つです。

  1. 会社全体のクリック率・報告率の推移(グラフ化)
  2. 部署別のクリック率・報告率(ヒートマップ表示)
  3. 損害リスクの低減試算(例:ランサムウェア被害回避額)

📌「教育投資」としての価値を可視化することが、今後の予算確保にもつながります。
アンケートを実施するなどして、社員のリアルな声も提示すると、より成果を示せます。


🚀 まずは「気づいてもらうこと」から始めよう

社員全員が「これは怪しい」と一瞬で気づける状態になっていれば、
高度なサイバー攻撃の 最初の突破口 を塞ぐことができます。

最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは“気づく力”を育てることからスタートしましょう。

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。