
2025年、多くの企業で「節税保険」の解約タイミングを迎えます。
その理由は、国税庁と金融庁による税制改革(通称「バレンタインショック」)を機に、それまでの節税保険の税務上の取り扱いが大幅に変更されたことをきっかけに、この変更前に多くの企業が駆け込みで節税保険に加入したことで、これらの保険が満期となって発生する解約返戻金が2025年前後に次々とピークを迎えるとされているからです。
解約に伴って発生する解約返戻金は、いわば”臨時の収入”。会計処理としては”雑収入“として計上されることになります。
これまで決算対策として繰り延べられてきた利益の全部または一部が、解約時に「雑収入」として計上されることで、損益計算書(P/L)の利益を押し上げ、法人税の課税対象となる可能性があり、会社の経営問題ともなり得ます。
つまり、解約返戻金として戻ってきても、放っておけばその多くを税金として納めることになってしまうということです。
普段は予算がないと渋い顔をする経営者も、臨時収入が税金として消えてしまうくらいなら…と考えるこのタイミングこそ、セキュリティ投資の必要性を役員層に伝える最大のチャンスと言えます。
【参考情報】節税保険に迫る「2025年問題」、今から備えるべき“4つの出口対策”
💡「税金で消えるくらいなら、将来の損失を防ぐ投資に使いませんか?」
返戻金はあくまで一時的な収益です。単なる利益確保ではなく、企業の未来に意味ある使い道として提案できる内容が求められます。
その答えの一つが、情報セキュリティ対策の強化──特に、社員を狙った標的型攻撃メールへの備えです。
🔐 標的型攻撃メール訓練は、単なる訓練ではありません
「うちは大手じゃないから、狙われることはない」
「EDRを導入しているから安心だ」
…このような言葉を役員から聞いたことがある担当者も多いかもしれません。
ですが、サイバー攻撃の多くは「人の判断ミス」を突いてくるものであり、どれだけツールを導入していても、最後の砦は“人”です。
✅ 標的型攻撃メール訓練の導入メリット
分類 | 内容例 |
---|---|
✅ インシデント予防 | 社員が不審なメールに気づき、被害の芽を摘む |
✅ 顧客からの信頼獲得 | 「セキュリティ教育をしている企業」として評価される |
✅ 組織の防衛力強化 | 単なる知識でなく、**“実際の判断力”**を鍛えることができる |
✅ ESG評価・企業価値向上 | セキュリティ意識の高さは企業ブランドにも直結する |
AIの登場により、攻撃を開始されてから被害が発生するまでの時間が大きく短縮され、システムの脆弱性を突かれてから被害が発生するまでに1秒とかからないといったことも言われるようになりました。
EDRの導入などにより、万一攻撃されてもそれを検知し、防御するといった対策ではもはや間に合わず、検知したときにはもう、被害が発生しているといったことが起こりうる状況では、そもそも被害が発生しないようにすることが本質的な対策となります。
システムで防御することを優先して行っていた企業は、人の脆弱性への対策が後回しになりがちですが、こうした企業こそ、システムと人への対策のバランスを改めて考え直す時期だと思います。
🧭 提案時に使えるフレーズ例
役員層に提案する際は、返戻金の発生と税金対策の文脈を上手に活用しましょう。
セキュリティに関する話は理解してもらえなくても、お金の話(特に税金対策の話)であれば、間違いなく興味を示してもらえるはずです。
📣 トーク例1:
「今年、返戻金で一時的に利益が出ますが、そのまま納税するのはもったいないと思いませんか? いまこそ、将来の損失を未然に防ぐ**“攻めのセキュリティ投資”**ができるタイミングです。」
📣 トーク例2:
「取引先からもセキュリティ体制の確認が求められる中、“教育している企業”として見られること自体が信頼に繋がります。メール訓練はその一歩として最適です。」
🔄 返戻金→税金ではなく、返戻金→セキュリティ投資→信頼・価値向上へ
解約返戻金をただの収入として処理してしまえば、課税されるだけです。
しかし、それをセキュリティ強化という“経費”に振り分けることで、将来的な情報漏洩やサイバー攻撃の損害を防ぎ、**目に見える成果(被害ゼロ、信頼アップ)**に変えることができます。
上場企業であれば、サイバー攻撃による損失は株価を下げる要因になります。株価下落による損失は、保険による節税対策によって得られる金額の比ではありません。
例えば、⽇本国内で情報流出等が発⽣した株価を一般社団法人日本サイバーセキュリティ・イノベーション委員会(JCIC)が調査したところ、株価 が平均10%下落。 特に、東証⼀部以外の企業は株価が15%も下落したとの結果を提示しています。
こうした損失が発生することを未然に防ぐことがどれだけ大事であるか、これは経営層にとっても「意味のあるお金の使い方」です。
しかし、セキュリティに詳しくない経営者は、解約返戻金をセキュリティ投資に回すことなど思いつきもしないかもしれません。
それどころか、セキュリティに投資してもお金は生み出さないので、解約返戻金をセキュリティのために使うなんてあり得ない!とすら思っているかもしれません。しかし、セキュリティ事故が起きて株価が10%も下落すれば、節税対策で得られる金額など軽く越えてしまうほどの損失が発生してしまうのは誰にでもすぐにわかることです。
セキュリティ担当者から提案しない限り、折角の解約返戻金も税金で消えてしまうか、新たな保険契約に回されてしまうなど、他のことに使われてしまうだけ。セキュリティ担当者はこうした情報を経営者に積極的にインプットするべきです。
✋ 提案を通しやすくする3つのポイント
- 損失リスクの金額換算
- 情報漏洩1件あたりの被害額(例:平均3000万円)などを提示
- 情報漏洩1件あたりの被害額(例:平均3000万円)などを提示
- 業界事例の紹介
- 同業他社でのセキュリティ事故の例・訓練導入の事例
- 同業他社でのセキュリティ事故の例・訓練導入の事例
- 定量的な効果の提示
- 訓練前後でクリック率が○%低下などの実績データ
📝 まとめ
✅ 2025年、節税保険の返戻金が発生する企業は多い
✅ 解約返戻金は税金で消える前に「未来への投資」に使える
✅ セキュリティ投資は、企業の価値を守り、信頼を勝ち取る手段
✅ 担当者として、いまこそ役員に提案する絶好のタイミング
解約返戻金の使い道については当然、解約返戻金を支払う保険会社の担当者、また、新たな契約を狙う他社の保険営業マンらも狙っています。
彼らは解約返戻金が支払われる前から新たな保険契約についても提案していますので、解約返戻金が支払われてから提案していたのでは間に合いません。
解約返戻金の使い道が確定される前に提案をしなければ、折角のチャンスも水の泡です。
攻めのセキュリティ提案は、返戻金という「特別予算」から始まります。
某CMのように「もっと早く言ってよ~」と言われる前に、この好機を逃さず、予算確保に動きましょう!