🎯なぜ差出人アドレスが重要なのか?

差出人アドレスは、訓練メールを開封してもらえるかどうかを左右する“第一印象”の要素です。
さらに、社内のメールフィルタにブロックされずに
確実に届くかどうかも、差出人アドレス次第。
つまり、「とりあえず架空っぽいアドレスをでっち上げる」という決め方はNGです。


🚫【NG例】架空のドメイン名はなぜダメなのか?

info@tokumei-corp.net」など、見た目はそれっぽくてもMXレコード(メール受信用のDNS設定)が存在しないドメインを差出人アドレスに使うと、以下のような問題が発生します。

  • ✅ メールが送信されずエラーで返ってくる
  • ✅ SPF/DKIM/DMARC認証で不正と判定され、スパム扱いされる
  • ✅ OutlookやGmailで**「信頼できない送信者」**と明示される

実在しない架空ドメインはDNSレコードが設定されていないため、DNSレコードを確認すれば、インターネット上では使われていないドメインであるかどうかがすぐにわかります。

正規のメールのやり取りで、MXレコードが設定されていないドメイン名を使うことはあり得ないので、実在しないドメイン名で送られてくるメールは差出人アドレスを間違えているか、真っ当なメールではないかのどちらかです。

なので、多くのメールサーバでは、MXレコードが存在しないドメイン名が使われていたら、相手には送らないようにする処理を行うため、結果として送り先に届かないということになります。


🔧差出人アドレス設計で注意すべき技術的要件

以下の要件は、訓練メールをスムーズに届けるために不可欠です。

  • ドメインに有効なMXレコードが設定されていること
  • SPFレコードに送信サーバのIPアドレスが含まれていること
  • DKIM署名が正しくなされていること
  • DMARCポリシーに矛盾がないこと

💡自社ドメインのサブドメインを使うと、これらを容易にコントロールできます。

セキュリティ対策の進展と共に、メールサーバのセキュリティチェックも厳しくなってきていますので、どんなメールでも送れば届くというわけではありません。

自社のメールサーバがどのようなセキュリティチェックを行っているかを知ることは、内製で訓練を実施する、外注で訓練を実施する、どちらの場合であっても必要不可欠です。

標的型攻撃メール訓練を実施できるサービスでは、上記の条件に合致する訓練用のドメイン名を提供していますので、それらのドメイン名を使うのも一つの方法です。

ちなみに標的型攻撃メール対応訓練実施キットでは、SPF、DKIM、DMARCに対応した16種類以上の訓練メール用のドメイン名を提供しています。


🧠本文内容との“整合性”をどう考えるか

訓練メールの差出人アドレスを考える上では、訓練メール本文の内容と差出人アドレスが自然につながるかどうかも重要です。

例:

  • 社内人事を装った訓練なら → jinji@〇〇.co.jp
  • 緊急の経理対応を装うなら → keiri@〇〇.co.jp
  • 社外取引先風を装うなら → tokui-soumu@partner.〇〇.co.jp

📌この“整合性”があるほど、現実味が高まり、社員の判断力を問う訓練になります。

差出人アドレスの記載を「名前 <メールアドレス>」(<>は半角)の形で記載すると、差出人アドレスにはメールアドレスだけでなく、名前も設定することができます。

例えば、「総務人事部担当 <tanaka@○○.co.jp>」などとすると、ぱっと見では名前の部分に目が行くため、実際のメールアドレスの部分はあまり本文と関係なくても、以外と気づかれにくいということがあります。


🗂差出人アドレスの決め方ステップガイド

例えば、以下のような流れで差出人アドレスをどうするか考えるとスムーズです。

STEP 1:本文のシナリオを決める
→ 誰からどんな用件で来たメールなのかを明確にします。

STEP 2:それにふさわしい“部署・役職”を設定
→ 件名・内容・口調と矛盾のない人物像を作ります。

STEP 3:技術設定を確認し、自社で使用可能なドメイン名の候補をリストする
→ SPF、DKIM、DMARCの整合性、MXの有無をチェック

STEP 4:リストしたドメイン名の中からメール本文と合いそうなものを選択する
→ 例:system-alert@notice.〇〇.co.jpsoumu@alert.〇〇.co.jp など

STEP 5:メール本文の内容に合わせて差出人アドレスの名前などを決定する
→ 総務人事部担当 <tanaka@○○.co.jp> など


💡実例紹介:よくあるシナリオと差出人アドレス案

訓練シナリオ例差出人アドレス案備考
社内の人事通知jinji@internal.〇〇.co.jp実在しないが存在しそうな内部アドレス
緊急の経理処理keiri@〇〇.co.jp本物のように見せかけることが重要
サプライヤーからの見積依頼meisai@partner-〇〇.com外部風のドメインに要注意(ドメイン取得済み推奨)
Microsoftを装うnoreply@microsoft-notice.jp実在のブランドを模倣する際は法的リスクに留意

📢信頼性とリアリティのバランスをとるために

差出人アドレスは、**信頼性(技術面)とリアリティ(心理面)**を両立させる必要があります。
適当に決めたアドレスでは届かない、あるいは訓練としてのリアリティを欠いてしまう恐れも。

🛡 訓練メールの本質は「気づき」を促すこと。
それを支える“差出人アドレス”は、設計力が問われる要素のひとつです。

もし、差出人アドレスの設定で迷うことがありましたら、お気軽にご相談ください

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キットマスター 標的型攻撃メール対応訓練実施キット開発者
プログラマ、システムエンジニアであり、情報セキュリティの分野では現役の標的型攻撃メール訓練実施担当として10年以上にわたり、毎月どこかしらで標的型攻撃メール訓練を実施している、訓練実施のエキスパート。